インターネット上のサービスを利用する人の年齢を、企業はどうすれば正確に把握できるのか。

これは、メタ・プラットフォームズがインスタグラムとフェイスブックで導入する大規模な未成年者保護策が直面する最大の課題だ。こうした安全対策がどこまで機能するかは、利用者の年齢を正確に把握できるかにかかっている。世界各地の若者はこれまで、オンライン上の規制や安全対策をかいくぐる方法を繰り返し見つけてきた。

メタは全米29州で訴えられた大型訴訟での和解で、最大180億ドル(約2兆8700億円)を支払うとともに、18歳未満の利用者がアプリを利用できる時間を制限するなど、サービスの設計を変更することで合意した。夜間のアプリ利用をブロックする措置や、授業時間中の通知を停止する措置も含まれる。10代の利用者については、投稿の「いいね!」数を表示する機能や、美容フィルターなどへのアクセスも制限される。

こうした変更は当面、米国の利用者のみが対象となる。メタの広報担当者によると、同社は他国・地域の政府とも引き続き協議していく。

オンライン上の安全対策を訴える人々にとって、今回の合意は、若者へのSNSの悪影響を巡る過去の事例で科された金銭的な制裁を大きく上回る内容で、少なくとも書面上は大きな前進だ。ただ、その実効性は、テクノロジー業界が長年苦慮してきた問題、つまり利用者の実際の年齢をどう把握するかにかかっている。このため、合意内容をどう監視・執行するのか、またどれだけ迅速に導入できるのかが課題となる。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のソニア・リビングストン教授は、「子供は何とか抜け道を見つけようとするものだ。ただ、年齢確認が適切に行われれば、そう簡単には規制をかいくぐれないだろう」と指摘。その上で、「こうした変更が機能していることを確認するには、大規模かつ継続的な監査が必要だ」と述べた。

年齢制限に抜け道

実際、オーストラリアで導入された規制では、未成年者の利用を狙い通りに制限することの難しさが浮き彫りになっている。

同国では昨年12月、TikTokやインスタグラム、フェイスブックなどのSNSで16歳未満の利用を禁止した。子供の安全を守る上で大きな前進と受け止められ、同様の規制を導入する国・地域も増えている。しかし、新たなデータによると、施行から8カ月がたち、オーストラリアでは多くの若者が再びSNSを利用するようになっている。

保護者が利用状況を管理するペアレンタルコントロールのソフトを手掛けるクストディオのデータによると、先月時点で13-15歳の約26%がTikTokを利用していた。これは、オーストラリアで規制が施行される前の水準をわずか1ポイント下回るにとどまる。10-12歳の利用率は現在、規制導入前を上回っている。インスタグラムとスナップチャットの利用率はTikTokより低いものの、当初低下した後、再びじわりと上昇している。

年齢制限をかいくぐる方法はさまざまだ。子供は年齢を偽ったり、仮想プライベートネットワーク(VPN)を使って別の場所からアクセスしているように装ったりできる。そもそも、各プラットフォームで実効性のある年齢確認が行われているのかとの疑問も出ている。

今回の和解合意では、新たな対策の実効性を確保するため、二つの仕組みが盛り込まれた。

メタには、インスタグラムとフェイスブックで年齢確認技術を強化するほか、安全対策を回避する利用者の特定に努めることが義務付けられる。メタと各州はさらに、和解条件が適切に実施されているかを検証する第三者の監査機関を共同で選定する。監査機関は、メタが対策の基準をどう定め、効果を測定し、必要なデータを収集しているかなどを検証し、進捗状況を報告する。重大な不備が見つかった場合、メタは短期間で是正を求められる。

競合にも対策求める

メタは、TikTokやアルファベット傘下のYouTubeに対し、年齢確認の強化を含む同様の規制を導入するよう働きかけている。若者が簡単に別のSNSに移れる状況では、自社だけが対策を講じても十分な効果は期待できないとしている。

LSEのリビングストン教授も「子供が別のプラットフォームに移るのは間違いない。『インスタグラムは2時間まで』となれば、その後はスナップチャット、さらにTikTokを使うようになるだろう」と述べた。

メタは、美容フィルターの禁止など、一部の新たな保護策については単独で導入することに合意した。一方、その他の対策をどこまで強化するかは、競合他社が足並みをそろえるかどうかにかかっている。

例えばメタは、TikTokとYouTube、スナップが同様の措置を導入することを条件に、1日当たりの利用時間の上限を現在の2時間から1時間に短縮し、夜間にアプリを利用できない時間帯も延長するとしている。また、TikTokとYouTubeが同様の措置を講じ、それぞれ約53億ドルを州側に支払うまで、メタも合意した支払額のうち約53億ドルを留保するという。

和解合意では、メタが受け入れた措置を「業界全体で導入」するよう促しているが、同様の変更を法的に義務付けるものではない。

TikTokとYouTube、スナップはいずれもコメント要請に応じなかった。

コーネル工科大学のタンジーム・チョードリー教授は「こうした対策は、テクノロジーが実際にもたらす害への解決策を時間や労力をかけて探るのを避ける安易な手段にすぎない」と指摘。「問題は若者がオンラインでどれだけ長い時間を過ごすかだけでなく、何を見ているかにもある」と述べた。

また、一部の対策は任意で、親が有効にするかどうかを選べるため、企業側の責任を親に転嫁するものだとも語った。

それでも複数の専門家は、今回の画期的な和解によって、子供を守るために必要な対策が法整備を待たずに導入されると評価する。

子供の権利擁護やデジタルメディアが児童に与える影響を研究する非営利団体、チルドレン・アンド・スクリーンズのクリス・ペリー事務局長は「これだけ多くの設計変更が導入されれば、インスタグラムやフェイスブックの利用体験は大きく変わると思う」と指摘。その上で、新たな対策がどの程度効果を上げているか、研究者が検証を始める必要があると訴えた。

原題:Kids Will Be Kids, and That’s the Risk With Meta Safeguards (1)(抜粋)

--取材協力:Madlin Mekelburg、Newley Purnell.

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