(ブルームバーグ):JPモルガン・チェースのストラテジストは、米財務省が長期金利の抑制に向け予想外の措置に踏み切ったことについて、市場から信頼性に欠けると受け止められ、時間の経過とともにタームプレミアム(長期債に対する上乗せ利回り)と利回りを押し上げる可能性があると警告した。
米財務省は19日、10年-30年物の米国債について、「流動性支援のための買い戻し規模を少なくとも2倍に引き上げる」と発表。これを受け、米長期国債利回りは低下した。
ただJPモルガンは、この措置は症状への対処にすぎず、根本原因には手を付けていないと分析。米国では完全雇用に近い経済状況にもかかわらず、財政赤字が国内総生産(GDP)比6%に達していることを問題視した。
ジェイ・バリー氏らストラテジストはリポートで、「実質的な財政再建がなければ、市場はこの措置を信頼性に欠けると受け止める恐れがある。財務省が債務管理でより裁量的な対応を取るようになり、『定期的かつ予測可能』という原則からさらに離れれば、時間の経過とともにタームプレミアムと利回りの上昇につながりかねない」と記した。
米国の政府債務残高は40兆ドル(約6300兆円)を突破しており、政府が発行する国債を増やし続ける中でも借り入れコストを抑えようとする政策当局にとって、その重要性は一段と高まっている。マーケッツ・パルスの調査では、回答者の約60%が、米国の債務問題は重大な危機を引き起こすまで悪化し続けるとの見方を示した。
米国債利回りは世界の借り入れコストの指標となるため、その影響は米国の財政にとどまらない。利回りの上昇は、米国の住宅ローンや社債に波及するほか、世界各国の通貨や国債にも影響を及ぼす可能性がある。
今回の措置に先立ち、財務省はここ数週間、長期金利の上昇に対する懸念の高まりを示す一連の決定を打ち出していた。財務省が13日に実施した30年債入札は落札利回りが約25年ぶりの高水準となった。発表を受け、30年国債利回りは一時、10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して5.18%となった。
シティグループのストラテジストは顧客に20年国債のロング(買い持ち)を推奨。ジェイソン・ウィリアムズ氏率いるチームは「われわれの見方では、今回の措置は長期ゾーンの利回りを抑えることが目的で、市場機能のためではない」と指摘。「今回の措置にインフレ鈍化が重なり、今後数カ月の力強い相場上昇に向けた環境が整った」と述べた。
「定期的かつ予測可能」
今回の措置が特に市場の注目を集めるのは、財務省が長年、「定期的かつ予測可能」で投資家を驚かせないという原則を堅持してきたためだ。ベッセント財務長官自身も11月の会議で行った基調講演で、この方針を支持していた。
米財務省は2023年に国債買い戻しプログラムを再開した。この仕組みが考案された20年以上前は、政府が財政黒字を計上しており、金利負担の大きい国債を買い戻して償還することが目的だった。これに対し、今回は市場の流動性向上が主要な目的の一つだ。トレーダーは通常、各年限で直近に発行された指標銘柄を選好するため、発行から時間がたった銘柄は流動性が低下し、取引コストも高くなる傾向がある。
それでもJPモルガンは、財務省の発表時期は「極めて異例」だったと指摘した。既発債の買い戻し日程を公表してからわずか2週間後だったためだ。今回の措置により、利回りが上昇し続けた場合、財務省が長期債の入札額を減らす可能性が高まった。
ただ、米政府はなお巨額の資金を借り入れる必要がある。JPモルガンは今後の複数の会計年度で3.5兆ドルを超える資金不足が生じるとみており、長期債の供給は減らすのではなく、増やす必要が生じる可能性が高い。
ストラテジストらは、「入札額を減らす可能性は以前より高まったとみているが、それが長期金利を押し下げる持続的な効果をもたらすとは考えていない」と指摘。「財政赤字を削減する措置が講じられない限り、今回の措置が長期ゾーンの利回りに与える影響は一時的なものにとどまる可能性が高い」と記した。
原題:JPMorgan Sees Credibility Risk in Treasury’s Bond Buybacks (1)(抜粋)
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