19日の米株式相場は小反発。米財務省が長期国債の買い戻しを拡大する計画を発表し、借り入れコストの引き下げを目指していることを示す動きとなった。

30年債が上昇し、利回りは10ベーシスポイント(bp、bp=0.01%)低下して5.18%となった。S&P500種株価指数の構成銘柄は大半が上昇したが、半導体株は下落した。ドル指数は3カ月ぶりの安値水準を付けた。

米財務省は10年-30年物の米国債について、「流動性支援のための買い戻し規模を少なくとも2倍に引き上げる」と発表した。わずか2週間前に今四半期の買い戻し計画を公表したばかりだった。

LPLファイナンシャルのローレンス・ギラム氏は「これは万能薬というより応急処置だ」と指摘。「ただ、財務省は市場を見張っており、利回りが急速に上昇し過ぎないよう、できる限りの手を打つ姿勢だということが、あらためて思い知らされた」と述べた。

財務省は買い戻しの資金をどう賄うか明らかにしていないが、変動する資金需要には通常、財務省短期証券(Tビル)の発行で対応している。当局が実質的に長期債を短期証券に置き換えるのであれば、この措置は米連邦準備制度(FRB)の「オペレーション・ツイスト」の財務省版に相当する。

インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トーレス氏によると、短期の年限は財政動向よりも金融政策の決定に左右されやすく、約30年も巨額の財政赤字を続けてきた米政府が、市場から直ちに厳しいしっぺ返しを受けるのを防ぐ効果がある。

午後に公表された7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨で、インフレが低下しなければ金融引き締めが必要になるとの認識を多くの参加者が示したことが明らかになると、株価は方向感を欠く展開となった。議事要旨にはイラン戦争が再び激化したことが「インフレ見通しを不透明にした」とも記された。

米国債

米国債相場は上昇。ベッセント米財務長官が長期の資金調達コストを抑える新たな措置に動いたため、長期債を中心に買いが膨らんだ。

エバコアのクリシュナ・グーハ氏は「今回の介入により、これまでの利回り上昇で投資妙味が増したとみる買い手を呼び込み、目先のショートカバーを促す可能性がある。再び不意を突かれることへの警戒から、投資家が今後、極端に売り持ちを膨らませることへの抑止にもなる」と述べた。

30年債利回りは一時、10ベーシスポイント(bp、bp=0.01%)低下して5.18%となり、2007年以来の高水準からの下げ幅を広げた。20年債利回りも低下したが、160億ドル規模の同年債入札に対する需要は低調だった。最高落札利回りは5.204%と、入札前取引(WI)の利回りを0.5bp上回った。

利回りの高止まりにより、住宅ローンなどの借り入れコストは高水準にとどまっている。こうした経済成長の逆風は、11月の中間選挙を控えるトランプ大統領と共和党にとっても潜在的な問題だ。米財務省自身の資金調達コストも押し上げ、すでに急増傾向にあった政府債務を一段と悪化させている。

ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「現政権は目に見える成果を必要としており、米国の長期金利を人為的に抑え込もうとすることが、その一つになるのかもしれない」と指摘。「政権は何か手を打たざるを得ない。世界的に長期債を巡るセンチメントは、ここ何年も見たことがないほど弱気に傾いている」と述べた。

今回の措置による効果がどの程度持続するかは不透明だ。マッキンタイア氏は「長期金利を本格的に押し下げるのは、景気減速かイラン紛争の解決だ。現時点で、まだそこには至っていないと思う」と述べた。

ベッセント米財務長官は昨年、米国債市場で混乱が生じた場合、必要に応じて「活用できる大規模な政策手段」の一つとして、国債買い戻しに言及していた。また、就任してからこれまでに繰り返し、金融市場を判断する上で10年債利回りを主要な指標にしていると述べている。

昨年11月には「私の仕事は米国債のトップセールスマンを務めることだ。米国債利回りはその取り組みの成否を測る強力なバロメーターだ」と語っていた。

今週に入り、世界的に長期債利回りの上昇が目立った。米30年債利回りは2007年以来の高水準に上昇。先週の10年債入札では、同年限として2007年以来の高い落札利回りとなり、翌日の30年債入札でも2001年以来の高水準となった。

ナティクシス・ノースアメリカの米国金利戦略責任者ジョン・ブリッグス氏は「利回りが行き過ぎれば、米財務省はそれを抑えようとするということだ。これで財務省がどのあたりの水準を問題視しているのかも見えてきた」と述べた。

米財務省によれば、買い戻しの増額は9月9日に開始する。同省は2週間前、「流動性支援」を目的に、オフ・ザ・ラン債と呼ばれる流動性の低い既発債を最大380億ドル(約6兆200億円)買い戻すとの見通しを示していた。

9月9日から11月4日までの暫定日程では、10年-30年物の米国債を最大で計140億ドル相当買い戻す計画だった。この規模を少なくとも2倍にすれば、買い戻し額は140億ドル以上積み増されることになる。

外為

外国為替市場では、ドル指数が3週間ぶりの大幅安となり、5月半ば以来の安値水準を付けた。米財務省が長期債の買い戻し拡大を発表し、債券相場が上昇したことが背景。

円は対ドルで上昇。一時は1ドル=158円05銭まで上げた。

ダーク・ウィラー氏らシティグループのストラテジストは「米財務省が長期債の買い戻しを少なくとも2倍に拡大すると発表したことは重要なシグナルだ。イールドカーブの長期ゾーンを安定させ、利回り上昇の勢いを抑えるとみられる」と指摘。「その主な代償は通貨安だ」と記した。

原油

ニューヨーク原油先物相場は上昇し、約3週ぶり高値。米製油所での原油消費が増えたほか、アラブ首長国連邦(UAE)とイランの対立で中東情勢が再び緊迫した。

UAEはイランとのあらゆる経済関係を断絶すると表明した。ドバイでは前日にミサイル警報が出された。トランプ米大統領は前日、イランとの交渉は行われていないと述べた。中東で紛争終結の糸口は見えない。

グローバル・リスク・マネジメントのチーフアナリスト、アルネ・ローマン・ラスムセン氏は「UAEとイランの関係悪化に加え、市場はホルムズ海峡封鎖が長期化するシナリオの織り込みを深めており、原油と石油製品の価格を支えている」と述べた。

最新の米政府データによれば、製油所稼働率は2019年9月以来の水準に上昇した。国内原油在庫が先週に440万バレル増加したにもかかわらず、原油価格が小幅に上昇したのは、この製油所稼働率の上昇が理由と考えられる。

動画:ホルムズ海峡をめぐる情勢を伝えるブルームバーグテレビジョン

米エネルギー情報局(EIA)によれば、留出油在庫は150万バレル減少し、約1カ月ぶりの低水準となり、これも原油相場を下支えした。燃料価格、特にディーゼル油は原油をはるかに上回る上昇となっている。ロシアとウクライナの戦争も、製油所への攻撃を受けてエネルギー市場の需給逼迫に拍車をかけているためだ。これが一般の自動車利用者やトラック運転手、農家にコスト圧力をかけている。

ディーゼル油の製油マージンは1バレル=100ドルを超え、過去最高を更新した。欧州市場ではガスオイル先物が今年、2倍を超える値上がりとなっている。

北海ブレント10月限は前日比60セント(0.7%)高い1バレル=91.62ドルで終了。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)9月限は89セント(1.1%)上げて85.83ドルで引けた。同限月は20日に最終取引を迎える。中心限月の10月限は、84.39ドルで終えた。

金

金相場は大幅に上昇し、一時は6月初め以来の高値を付けた。米財務省が長期債買い戻し上限の引き上げを発表し、長期債利回りが低下したことが、金への追い風となった。

米財務省による買い戻しの拡大は、約40兆ドルに上る連邦債務と比べればごくわずかだが、この措置は米国債市場に対する当局の支援てこ入れと、最終的には金融環境の緩和を示唆する。この組み合わせは金相場にとって強材料だと、サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は述べた。

金のトレーダーは今後、米国債市場の支援を目的とした追加措置にますます注目する可能性が高い。そうした措置が債券価格の形成をゆがめるものと受け止められれば、ドル安につながる可能性がその分高まり、それが金相場を下支えするとハンセン氏は指摘した。

金相場はここ数週間に値を戻し、4400ドル近辺で取引されていた。投資需要の復活と、中国など中央銀行による買いが価格を押し上げた。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のファンドマネジャー調査によれば、金が過小評価されているとの回答が2023年3月以来の高比率に達した。

センチメント改善の兆候は、金を裏づけとする上場投資信託(ETF)にも表れている。ブルームバーグが追跡する金ETFでは、18日に保有する金が合計25万7000オンス余り増加し、1日としては4月以来の大規模な流入となった。

ただ、米国とイランの和平合意への期待が薄れていることで、エネルギー価格が高止まりし、金相場のさらなる上昇は抑えられる可能性がある。19日に公表された7月FOMCの議事要旨によると、先月の会合で利上げを支持した参加者は、正式に据え置きに反対票を投じた3人よりも多く、インフレが改善しなければ利上げは必要になるだろうとの認識を多くが示した。金利上昇は通常、利息を生まない金投資にとってマイナス要因となる。

スポット価格はニューヨーク時間午後3時現在、前日比160.16ドル(3.7%)高い1オンス=4494.66ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、同124.70ドル(2.8%)高い4545.30ドルで引けた。

欧州

超長期債が反発。米財務省が長期国債の買い戻しを増額するとの予想外の発表を行ったことに反応し、ドイツ国債も4営業日ぶりに上昇した。

ドイツ10年債利回りは一時2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して3.24%、30年債利回りは4bp低下して3.73%を付けた。いずれの利回りも午前の取引では、2011年以来の高水準に上っていた。

30年債利回りが低下する一方で、短期債利回りはやや上昇し、利回り曲線はツイストフラット化した。

英国債はこの日の欧州国債の上げを主導。前日に2カ月ぶりの高水準に達していた30年債利回りは、7bp低下の5.76%となる場面もあった。

20日はフランスが3年物と5年物の固定利付国債、2043年および47年償還予定の物価連動国債などを発行する予定。

株はほぼ変わらず。指標のストックス欧州600指数は一時0.4%高となったが、引けにかけて上げを消した。

夏枯れ相場の様相で、取引時間の大半を通じて狭いレンジ内の動きにとどまった。出来高は平均より約2割少なかった。

業種別では鉱業が3%余り上昇。一方、債券利回りの低下を受けて銀行株は売られた。

8月19日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)

原題:Stocks Rise as Treasury Steps In to Support Bonds: Markets Wrap(抜粋)

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--取材協力:鈴木克依.

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