米ウォルト・ディズニーと傘下のABCは、米連邦通信委員会(FCC)が番組内容を理由にABCを罰する目的で違法な「報復キャンペーン」を展開しているとして、FCCを提訴した。

ABCは18日にワシントンの連邦地裁へ提出した訴状で、FCCが「口実に過ぎない規制上の調査」に乗り出し、放送免許更新の審査を前倒しするなど、憲法修正第1条で保障された権利を侵害していると主張した。

訴状は「政権は、ABCの言論、記者の報道内容、ネットワーク番組で放送される見解を繰り返し攻撃してきた」と指摘。「時間の経過とともに、その攻撃はABCの言論を理由に放送免許を剥奪しようとする露骨な要求にエスカレートした」とした。

ディズニーとFCCとの対立は少なくとも昨年までさかのぼる。カー委員長率いるFCCは、今後数週間以内にディズニーを対象とする2件の調査を巡り、何らかの措置を講じる見通しだ。

一つはディズニーが所有するテレビ局8局の放送免許を通常より早く審査するもので、もう一つは、ABCの昼のトーク番組「ザ・ビュー」をどの番組区分に位置付けるかを検討するもので、判断次第では同番組で民主、共和両党の選挙候補者に同等の放送時間を与えるよう義務付けられる可能性がある。

ABCは訴状で、政府による検閲は「米国の理念に根本から反する」と批判。免許更新の審査前倒しで追加措置を講じたり、ABCの編集裁量に介入したりすることをFCCに禁じるよう、裁判所に求めている。

FCCの報道官は「すべての放送事業者には公共の利益に沿って業務を行う法的義務がある。ディズニーであってもだ」とコメントした。また、ABCを対象とする2件の調査について、ディズニーが「FCCの手続きを非常に懸念していることは明らかだ」とした。

人気深夜番組巡り対立

今回の訴訟の発端は、カー委員長が昨年、ディズニーの多様性・公平性・包摂性(DEI)プログラムが差別を禁止する法に違反していないか調査を開始したことにある。調査着手は、FCCとトランプ政権がABCの深夜番組「ジミー・キンメル・ライブ!」を巡ってディズニーと対立し、大統領を長年批判してきた司会者ジミー・キンメル氏を解雇するよう同社に求めた後だった。この対立は、メディアの偏向と政府による検閲を巡る全米規模の論争を引き起こした。

FCCは4月、ディズニーが多様性・包摂性の慣行に対する調査に十分に応じなかったとして、ABCの放送免許に対する極めて異例の審査に着手した。通常より少なくとも2年前倒しで免許審査を始める方針が示されたのは、キンメル氏による大統領とメラニア夫人に関する発言を理由に、トランプ氏が再びABCに同氏の解雇を求めた翌日だった。

訴状によると、FCCが予定より早く免許更新申請を求めた例は、過去半世紀以上にわたって存在しない。また、単一の放送ネットワークと共通の所有関係にある複数の放送局に対し、更新申請の同時前倒しを要求したことも一度もないという。

ディズニーの提訴は、報道内容や組織の方針決定がトランプ氏の意向と相いれない場合、政権が介入や報復に出ることへの懸念を映している。政府の標的となった米大学や法律事務所も、訴訟で同様の主張を展開している。トランプ氏に敵対視され、刑事訴追された複数の人物も、不当に狙い撃ちされたと訴えている。

トランプ氏SNS投稿を引用

ディズニーの法的措置は、「議会や過去の裁判所の判断がFCCに付与した、広範で乱用を招きかねない権限に対し、正面から異議を唱えるものだ」と、ケイトー研究所の表現の自由・テクノロジー担当フェロー、デービッド・インセラ氏は指摘した。

「何が公正か、平等か、あるいは公共の利益にかなうかについて、政府機関が自らの判断に基づいて表現の自由を制限できるような権限は、決して与えられるべきではない」と述べた。

今回の訴状は、トランプ氏によるSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿も引用している。トランプ氏は、ABCの「極めて価値の高い放送免許」は取り消されるべきだと過去に投稿しており、理由として、同社のニュース番組と深夜番組が「ドナルド・J・トランプ大統領、MAGA、共和党に対して、ほぼ100%否定的だ」と主張していた。

FCCで唯一の民主党系委員であるアンナ・ゴメス氏は、ディズニーの対応を評価した。「私は長年、こうした政府の威圧に企業が抵抗するよう求めてきた。ディズニーが勇気を示し、立ち上がったことをうれしく思う」と声明で述べた。ゴメス氏は、カー委員長によるメディアへの締め付けを長年批判してきた。

ディズニーはFCCとトランプ政権への対抗姿勢を強めており、対立回避を優先してきた従来の姿勢から転換しつつある。

2024年には、トランプ氏がABCニュースとアンカーのジョージ・ステファノプロス氏を相手取って起こした名誉毀損(きそん)訴訟を決着させるため、1600万ドルを支払うことに同意した。昨年はFCCからの圧力を受け、保守系活動家チャーリー・カーク氏の殺害を巡る発言を理由に、キンメル氏の番組を一時休止した。同氏が数日後に復帰すると、番組は視聴者数の記録を更新した。

ディズニーは6月、FCCと争われている案件を巡り、視聴者に支持を呼びかける放送キャンペーンを開始した。一般から15万件を超える意見が寄せられ、その大半はディズニーがABCテレビ局8局の放送免許を維持することへの支持を表明するものだったという。

ABCは訴状で、米連邦最高裁が米国における強固な言論の自由の保障を繰り返し確認してきたと指摘。わずか2年前にも、政府は「国家権力を用いて、好ましくない表現を罰したり抑圧したりする」ことはできないとの判断を全会一致で示したとした。

成果を誇示

ABCは訴状で、トランプ氏の2期目が始まって以降、他のメディア企業が行った「言論に関わる譲歩」について、カー委員長が「公然と自らの成果だと主張している」と指摘した。

訴状は、保守政治活動協議会(CPAC)でカー氏が行った演説を引用。同氏は「トランプ大統領はフェイクニュース・メディアに立ち向かい、勝利している」と述べたという。また、「これまでの成果を見てほしい」とも発言し、PBSやNPRへの資金が打ち切られたことなどを挙げた。

ABCの放送免許更新を認めないよう申し立てている保守系メディア監視団体「センター・フォー・アメリカン・ライツ」は、今回の訴訟について、「違法かつ差別的な雇用慣行に関するFCCの調査を阻止しようとする必死の試みだ」と批判した。

同団体のダニエル・サー会長は声明で、憲法修正第1条によってディズニーが「FCCの免許保有者として、民主党の党派的利益ではなく公共の利益に沿って事業を運営する義務を免れるわけではない」と述べた。

原題:Disney Sues FCC Over ‘Retaliatory Campaign’ Tied to Licenses (2)(抜粋)

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