(ブルームバーグ):米国の対イラン軍事作戦はこれまでのところ、イランの体制を屈服させるには至っていない。トランプ政権は、経済的な締め付けを強めれば今度こそ目的を達成できると再び見込んでいる。
必要な弾薬が不足し、世論の支持を得られていない戦争の継続にも慎重になる中、トランプ大統領と政権高官はイラン体制への対応で、これまでと同じ戦略に回帰している。経済制裁を着実に強化するとともに海上封鎖を実施し、原油輸出を封じ込める戦略だ。
経済的な打撃を重視する方針は、トランプ氏の1期目には「最大限の圧力」と呼ばれていた。イランとの戦争が約6カ月に及ぶ中、わずか数日前まで軍事作戦の強化を警告していた政権にとって、これは明確な方針転換となる。
この手法では2020年までにトランプ氏が望んだ結果を得られなかったが、トランプ氏と政権チームは今回は成功すると主張する。
ベッセント財務長官が主導する経済制裁作戦「オペレーション・エコノミック・フューリー」はイラン経済に壊滅的な打撃を与えていると、ウォルツ米国連大使が10日、FOXニュースに語った。ウォルツ氏は、イランは「爆撃には耐える」ものの、イラン国民がヘグセス国防長官よりもベッセント氏を恐れているとの見解を示した。
トランプ氏も9日、ニュースサイトのアクシオスに同様の見方を示し、イランに対して「控えめな対応を取っている」と指摘。「深刻なインフレに見舞われ、資金もないイランの状況をただ見守っている」と語った。
ベッセント氏も数週間前にFOXで同様の主張を展開し、「政府が国民を苦しめており、われわれは圧力をかけ続ける」と述べた。
こうした見方は、イラン体制が経済崩壊に向かって揺らいでおり、アラブ首長国連邦(UAE)など他国を経由して制裁を回避する選択肢も減っていると主張する一部のアナリストの見解と一致する。
米シンクタンク、民主主義防衛財団のシニアフェロー、ミアド・マレキ氏は「UAEを含め、かつて制裁逃れに利用されていた国・地域がイランの不正な金融取引や貿易に対してはるかに厳しくなり、世界市場がイラン産品への依存度を下げるにつれ、既存の米制裁の威力は格段に増す」と述べた。
ただ、こうした見方には疑問も残る。米国はイランを含む一握りの国々に数十年にわたり制裁を科してきたが、政治面での実質的な変化にはつながっていない。北朝鮮や、トランプ氏が最近標的にしているキューバも同様だ。
イランの石油・石油化学部門に対する制裁措置を調査している法律事務所ヒューズ・ハバード・アンド・リードのパートナー、ジェレミー・パナー氏によると、トランプ氏が2018年に新たな制裁指定を相次いで開始して以降、米国はイランに対する制裁を約2200件追加した。このうち約350件は、ベッセント氏が推進するエコノミック・フューリーの一環だ。
しかし、これまでのところ、イランに核開発計画で譲歩させることも、ホルムズ海峡の封鎖を解かせることもできておらず、ほかの面でもほとんど成果は上がっていない。
「体制は強固だ」と、制裁に特化したコンサルティング会社、ブラックストーン・コンプライアンス・サービシズのディレクター、デービッド・タネンバウム氏は述べた。制裁は体制への資金供給を断つため実施する価値があるとした上で、「それで体制が変わるとは思わない。核開発計画を放棄するよう説得できるとも思わない」と語った。
新たな方針について取材に応じたホワイトハウス当局者は、制裁と海上封鎖によってイランの資金は完全に底を突いており、トランプ氏には今後数カ月に行使できる手段が数多くあると説明。ただ、トランプ氏が具体的に何を検討している可能性があるのかなどの詳細は明らかにしなかった。
米国には、イランによる原油輸出や売却代金の回収をさらに困難にする余地がある。しかし、制裁を一段と強化するたびに外交上の代償は大きくなり、追加的な経済的打撃が政治的譲歩につながるとの確実性は低下していく。
圧力を強める選択肢の一つとして、イラン産原油の二大輸入国である中国とインドを標的にすることが考えられる。中でも中国は、イランの原油輸出の90%以上を購入している。こうした購入を仲介する事業体に制裁を科せば、イランの石油収入を直接減らすことができる。
米国はイランとの紛争開始以降、中国の一部の独立系製油所や企業をすでに制裁対象としているが、イラン産原油の取引を金融面で支える中国の大手銀行への制裁は警告にとどまっている。
中国の大手金融機関への制裁はイランの石油収入を減らす可能性がある一方、9月に予定されるトランプ氏と中国の習近平国家主席の会談を前に、中国側との新たな対立を招くリスクもある。
ほかに標的となり得るのは、UAEなどでイランによる海外資金の回収を支援する両替業者だ。イランは原油を売却した後も、代金の通貨交換に両替業者や仲介業者を必要とする。代金は中国人民元で受け取ることが多く、実際に利用できる通貨に換える必要があるためだ。ただ、この措置だけで大きな違いが生じる可能性は低い。
「それでイランを屈服させられるのか。それだけではおそらく無理だ」とパナー氏は述べた。
原題:Trump Reverts to Economic Squeeze of ‘Entrenched’ Iranian Regime(抜粋)
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