ベッセント米財務長官が、日本による円買いを支援するために活用できる米連邦準備制度理事会(FRB)の制度強化を求めたことで、通常は一定の距離を保って運営される財務省とFRBの関係に改めて注目が集まっている。

米財務省が日本と協調して円相場を下支えした後、ベッセント氏は2日、FRBの外国・国際通貨当局(FIMA)レポファシリティーの重要性を強調した。この制度では、海外の政府・中央銀行が保有する米国債を担保としてドル資金を調達することが可能だ。

ベッセント氏はソーシャルメディアへの投稿で、このFRBの制度は日本の取り組みを支える重要な仕組みだとした上で、「今後数カ月以内に、その規模を拡大することを推奨する」と述べた。

片山さつき財務相は声明で、日本政府が7月31日に円買い介入を実施したことを認めるとともに、今後はFRBの制度も活用する方針を示した。FRBはコメントを控えた。

金融市場の安定を確保するためにFRBと財務省が連携すること自体は、特に市場が不安定な局面では珍しいことではない。市場関係者は、日本が保有する米国債を売却すれば米国債利回りの変動が一段と大きくなる恐れがあるため、FRBが日本による円買い介入を円滑に進めることを支援する十分な理由があるとみている。

ただ、FRBを長年分析してきた関係者によると、財務長官がFRBの制度の変更を公の場で求めるケースは極めてまれで、とりわけ米連邦公開市場委員会(FOMC)が所管する制度については異例という。

元米財務省高官のマーク・ソーベル氏は「極めて異例だ」と指摘。「私が在職していた頃、財務長官はFRBの金融政策運営に関わる問題について公の場で発言することを極力避けていた。仮に必要が生じても、FRB議長と非公開で話し合い、水面下で対応していただろう」と述べた。

FIMAレポファシリティーは、海外当局がドル資金を必要とする際、保有する米国債を売却する代わりの手段を提供することで、米国債利回りへの影響を和らげることを目的とした制度だ。利用上限は取引相手先ごとに1日600億ドル(約9兆4000億円)となっている。

取引相手先ごとの利用上限を引き上げるには、FOMC傘下の外国通貨関連の小委員会の承認が必要で、変更時にはFOMCへの報告も義務付けられている。

ドルの支配的地位

ホワイトハウスはFRBに対し、インフレ率が2%目標を大きく上回る中でも利上げを見送るよう政治的圧力をかけ続けている。トランプ大統領はこれまで繰り返し、金利はもっと低くあるべきだと主張している。

ベッセント氏自身も過去には低金利を支持する考えを示してきたが、就任時には金利の方向性については発言しないと約束していた。また「ドルの支配的地位」を強化するため、より多くの国へ通貨スワップラインを拡大する構想についても言及しており、実現にはFRBの協力が必要となる可能性がある。

米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の上級研究員、スティーブン・カミン氏は、海外で最大の米国債保有国である日本が円買いのために米国債を売却する場合、その影響が米国債利回りへ波及するのを最小限に抑えることはFRB自身の利益にもかなうと指摘した。

「為替介入そのものをFOMCが支援したいと考えているかどうかは分からない」とした上で、「一方で、日本のような国がいずれにせよ介入するのであれば、米国債を売却せずに実施する方が望ましい」と述べた。

クロックタワー・グループのチーフマクロストラテジストで、マイラン元FRB理事の顧問を務めたエリック・ウォーラースタイン氏は、この制度を拡大しても、政治面でも市場リスクの面でもFRBに大きなリスクはないと言及。「借り入れは短期で、米国債を担保とし、利払いも伴うため、FRBにリスクはない」と述べた。

一方、FRBウオッチャーにとって注目されたのはベッセント氏による要請の内容そのものよりも、公の場で示されたことだったと、ウォルフ・リサーチのトービン・マーカス氏は指摘する。

マーカス氏は「財務省がこの種のFRBの制度変更を、公表前に水面下で調整するのではなく、公然と求めた前例は思い当たらない」と語った。

原題:Bessent Seeks Fed Help in Defending Yen in Unusual Call(抜粋)

(第10段落以降に市場関係者のコメントなどを追加して更新します)

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