ベッセント米財務長官率いる財務省の債務管理チームは、米国債の発行方針を巡るガイダンス修正を求めるウォール街の提案を長期にわたって退けてきた。このため、多くのプライマリーディーラーは近く方針変更があるとはみていない。

四半期定例の国債発行計画に関する声明の公表を5日に控え、大半のプライマリーディーラーは、財務省が「少なくとも向こう数四半期にわたって」中長期債の発行額を据え置く方針を改めて示すと予想している。このフォワードガイダンスはバイデン前政権時代に導入されたもので、ベッセント長官はかつて、2024年11月の大統領選を前に長期金利の上昇を抑える狙いだと批判していた。

トランプ米大統領率いる共和党が中間選挙を控える現在、政権には利回りが一段と上昇する事態は避けたいとの思惑がある。発行額の増額を示唆すれば、利回りがさらに上昇する可能性がある。30年債利回りは先週既に2007年以来の高水準を付けた。短期債と比べた調達コストの高さから、多くのプライマリーディーラーは財務省が今後数年にわたり30年債の発行額を増やすことはないとの見方を強めている。

Photographer: Krisanne Johnson/Bloomberg

ベッセント氏は就任以来、政府の資金調達需要拡大に対応する上で、償還期間が1年以内の財務省短期証券(Tビル)に依存してきた。短期金利は長期金利より低いため、財務省の利払い負担の抑制につながっている。

ただ、この戦略にはリスクも伴う。短期国債への依存が続けば、債務返済コストは短期金利の変動に左右されやすくなる。市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後数カ月に金融引き締めを迫られるとの見方が広がっている。

RBCキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者ブレーク・グウィン氏は、ガイダンスを修正することで「財務省は選択肢を広げるべきだ」と指摘する。「利回り上昇を招くリスクはあるが、この変更はいずれ必要になる。先送りすればするほど、ガイダンス撤回の重要性が市場で意識され、市場への影響も大きくなる可能性がある」と述べた。

米連邦政府の財政赤字は今後数年間、約2兆ドル(313兆円)規模で推移するとエコノミストらは予想する。政府は借り入れを一段と拡大せざるを得ない見通しだ。

財務省は5日の四半期定例入札計画の発表に先立ち、3日に7-9月(第3四半期)の資金調達見通しを更新する予定だ。5月時点では、7-9月の純借入額を6710億ドルと見込んでいた。

バンク・オブ・アメリカは、財務省が2027会計年度まで利付債(クーポン債)の発行額を据え置けば、発行残高に占めるTビルの比率は約25%に達すると試算している。新型コロナウイルス禍や世界金融危機時を除けば、2004年以来の高水準となる。

5月の前回の四半期定例入札以降、プライマリーディーラーはクーポン債の発行増額時期の予想を後ずれさせており、多くは2027年5月を見込んでいる。

来週の定例入札で発行額が据え置かれれば、内容は以下の通りとなる。

  • 8月11日:3年債、 580億ドル
  • 8月12日:10年債、 420億ドル
  • 8月13日:30年債、 250億ドル

JPモルガン・チェースの ジェイ・バリー氏率いるストラテジストは「慎重な債務管理の観点から、財務省は今回、長年維持してきたフォワードガイダンスから『少なくとも』という文言を削除すべきだ」と先週のリポートで指摘した。

ただ実際には「政治的な事情もある」とし、中間選挙を前に利回り上昇を避けたいという思惑があると分析。ベッセント氏も長期金利の低下を重視していると付け加えた。

原題:Bessent Seen Rebuffing Wall Street on Guidance for US Debt Sales(抜粋)

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