(ブルームバーグ):レバレッジ型の上場投資信託(ETF)は個別銘柄の日々のリターンを2倍、3倍に増幅できるという魅力的な商品である一方、投資家にとって極めてリスクの高い商品として知られる。
そのレバレッジ型ETFが韓国では市場の安定を脅かす存在であることも明らかになりつつある。韓国では激しい相場変動を抑えるため、規制当局が個人によるレバレッジETFへの投資規制を強化している。
一方、こうした商品の人気拡大が、レバレッジを提供する銀行にも大きなリスクをもたらしていることは、あまり知られていない。銀行は、世界でも特に値動きの大きい銘柄に伴うテールリスクの拡大をヘッジする必要がある。
投資銀行やヘッジファンドなどの機関投資家が、暴落に備える「クラッシュ・プット」と呼ばれる金融商品を売買するデリバティブ(金融派生商品)市場の一角で、水面下の取引が急増している。
クリケットやスタビリティーノートとも呼ばれるこれらの商品は非上場の相対取引であるため、取引の拡大を正確に把握することはできない。だが、市場関係者への取材やブルームバーグ・ニュースが確認した資料からは、こうした商品の取引が急増している実態がうかがえる。
ジャナス・ヘンダーソンの分散型オルタナティブ運用チームでポートフォリオマネジャーを務めるナターシャ・シブリー氏は、「この商品にこれほど強い需要を見たことがない」と話す。

ゴールドマン・サックス・グループは5月、「割高なクラッシュ・クリケット」と呼ぶ取引をメールで売り込んだ。韓国のSKハイニックスとサムスン電子の株価変動リスクをヘッジしたいという旺盛な需要に乗じる取引だった。1日で株価が50%以上下落すれば、両社株に連動する2倍レバレッジETFは実質的に価値を失う可能性があるためだ。
具体的にどれほど割高だったのかと言えば、最長1年間、テールリスクを引き受ける投資家に提示された利回りは14.2-20%に達した。さらにレバレッジを利用すれば、リターンを一段と拡大することもできる。
資料には、この取引は「投資家が保険の引受人の役割を果たし、割高な暴落保険を売ることで高い保険料収入を得る機会となる」と記されていた。
実際には、SKハイニックスやサムスン電子が1日で50%以上急落する可能性は極めて低い。SKハイニックスは終値ベースで過去最大の下落率が7月13日の15.4%だった。
ただ、そうした株価急落が全く起きないわけではない。 米EVメーカーのルーシッド・グループは7月14日、取引時間中に一時57%下落し、その後下げ幅を縮小して終値では16%安となった。この株価に連動するレバレッジETFは、その後運用を終了した。
クラッシュ・プットは、ETF運用会社にサービスを提供する銀行が、取引の相手方となるだけの資産とリスク許容度を持つ投資家から、暴落リスクへの備えを購入できるようにする商品だ。
カイロス・インベストメント・アドバイザーズの創業者で最高投資責任者(CIO)のラモン・ベラステギ氏は、「これらの商品は、引き受けたリスクをそのまま別の相手へ移すための効率的な仕組みだ。銀行は現在、レバレッジETFをヘッジする目的でクラッシュ・プット市場を育てようとしている」と話した。
原題:Banks Offload Risk from Leveraged ETFs With Exotic ‘Crash Puts’(抜粋)
--取材協力:Sangmi Cha、Christian Dass、Charlotte Yang、Athanasios Psarofagis、Weihua Li.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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