日米両国が協調して円を支えるための為替介入を実施したことで、円安に賭けていた投資家にとってはリスクが高まったとストラテジストらは分析している。一方、持続的に円が上昇していくためには内外金利差などファンダメンタルズに変化が生じることが必要で、鍵を握るのは日本銀行との見方は多い。

日米財務相は3日、7月31日の外国為替市場で日米が協調介入を実施したことを明らかにした。今後さらなる協調介入を実施することも躊躇(ちゅうちょ)しないとしている。日本の財務省がウェブサイトで片山さつき財務相の談話を発表。ベッセント米財務長官はX(旧ツイッター)に投稿した。

【ストラテジストの見解】

イーストスプリング・インベストメンツの債券ポートフォリオマネジャー、ロン・レン・ゴー氏

  • 米国の協調は介入規模の拡大にもかかわらず、市場への影響が薄れているのではないかという疑問が高まっていた中で円相場を安定化させようとする日本の通貨当局の取り組みに対する信頼性を高めた
  • ただし、根強い円安は日本の金融・財政政策の在り方に対する懸念を反映しており、こうした根本的な問題が解決されない限り、介入だけでは持続的な反転をもたらすことは難しい
  • 米国の介入で円相場の上下動がより激しくなる点は重要な変化だ。円安はもはや着実かつ予測可能な形で進むとは限らず、円売りポジションの取り方も単純ではなくなっている

アストリス・アドバイザリー・ジャパン投資戦略責任者のニール・ニューマン氏

  • 日米が協調介入を行い、米国が異例の措置としてユーロを売却したという事実は、為替相場の流れを変えるための取り組みが行われていることを示唆し、必要に応じてさらなる介入が行われると予想すべきだ
  • 円高が徐々に進行すれば、投資家が海外債券の保有を減らし、資金を日本へ再配分する動きも促されるだろう
  • ただ、介入はシグナルを送るための手段で、通貨安に対する長期的な解決策ではない
  • 長期的に円を強める唯一の方法は、日米金利差を縮小させることだ。実現するには日本銀行が利上げを行い、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行うことだが、そうなればキャリートレードは消滅する
  • 介入の即効性が薄れるにつれ、円は弱含みの動きとなる可能性が高く、円は158円、159円に向け推移すると予想される

ロンバー・オディエのストラテジスト、ホミン・リー氏

  • 財務省の介入が円相場にとって転換点となる可能性は低いものの、今週はショートスクイーズが発生し、少なくとも一時的に円が対ドルで上昇する余地がある
  • 介入に先立ち、投機的なショートポジションが相当程度積み上がっていた。FRBの静観姿勢、ベッセント氏の円買いに関するメモ、円高が進むウォンとの相関関係を合わせれば、これだけで為替トレーダーの間でさらなるポジション調整を促すには十分
  • 持続的な黒字経済での通貨防衛は多少異例で、財政懸念や日銀による段階的な利上げを背景に、これを無期限に維持することはできない
  • われわれの見解では、円はファンダメンタルズに比べ依然過小評価されているが、現在の世界経済情勢を鑑みると、今後12カ月間で大幅な円高局面は起こりにくいだろう

オーバーシー・チャイニーズ銀行の為替ストラテジスト、モー・シオン・シム

  • 米国との協調介入を踏まえると、ストップロスが発動されればドル・円は155を下回る可能性はあるが、円安を食い止められるかどうかは、日銀がよりタカ派色を強めるかどうかが鍵になる
  • ドル・円の動向を左右する要因として、「3本の矢」が挙げられる。第1の大規模な為替介入は既に実施され、第2は日銀のよりタカ派的な姿勢、第3は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)やNISA(少額投資非課税口座)を通じた国内投資を促進する措置だ

リード・キャピタルのジェラルド・ガン最高投資責任者(CIO)

  • 協調介入は円高に有意義な影響を与えることはないだろう。介入は短期的には有効だが、市場のセンチメントを長期にわたって変えることはできない
  • 日米が意図的に円を支え続けたとしても、それは長くは続かず、今後介入を重ねるごとにその効果は薄れていくだけだ
  • 円が持続的に上昇するための主なファンダメンタルズの要因は、依然として日銀の行動にある

サクソ・マーケッツの最高投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏

  • 協調介入により、円安を予想して売りポジションを取る際の短期的なリスク・リワードは変化した。特に市場が初期の動きを急速に巻き戻した場合、当局は単発的な介入ではなく、一連の介入を行うことが多く、積極的な円売りポジションを再構築するハードルは高まる
  • 米国の支持は重要で、両国政府が足並みをそろえている場合、市場は介入に対抗する意欲を大幅に失う
  • しかし、円高が持続するためには、最終的にはファンダメンタルズの裏付けが必要で、日銀による追加の金融引き締め、米国債利回りの低下、あるいは日本の財政見通しに対する信頼感の改善などが考えられる
  • これらのいずれかが欠けていれば、介入は円安のペースを鈍らせることはできても、円安を恒久的に逆転させることは難しいだろう。
  • 日本の株式市場は円安の最大の恩恵を受けてきたため、急激な反転は当然輸出企業や収益予想に重くのしかかり、初期反応はマイナスになる

ペラム・スミザーズ・アソシエイツ創業者のペラム・スミザーズ氏

  • 日本では再びインフレへの懸念が高まっている。政府が円を支えざるを得ない状況について誰もあまり気にしていないが、リスクはこれがマクロファンドにとって1992年の英国のような一方的な賭けになってしまうことだ
  • 政府による為替介入が失敗したと見なされれば、円に対する本格的な売り浴びせが起こりかねず、そうなればインフレ見通しはさらに悪化するだけだ

--取材協力:西沢加奈、グラス美亜、Ruth Carson.

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