(ブルームバーグ):日本銀行は、利上げペースを半年に1回程度の市場見通しよりも加速させることに柔軟な姿勢だ。足元の円安進行の影響を含めて物価が想定から上振れていくリスクに警戒感を強めている。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、政策判断で重視する一時的な要因を除く中長期的なトレンドを示す基調的な物価上昇率が、2%の物価安定目標にかなり近づいていると日銀は認識している。2%を上抜けていく可能性にも注意を払う必要性が高まっており、上振れリスクを一段と精査することが重要な局面にあるという。
また、現段階で最近の円安が直接的に物価を押し上げる程度は大きくないものの、日銀では為替相場の変動が消費者物価に及ぼす影響が従来よりも増しているとみている。特に企業の価格転嫁の動きが強まっている現状では、値上げ交渉の材料になりやすいことも含め、物価の追加的な上振れリスクになり得るという。
日銀は前回6月の金融政策決定会合で政策金利を1.0%程度に引き上げた。30、31日に開く会合では、6月利上げの影響を見極める観点も含め、政策金利の維持が決まる公算が大きい。
関係者によると、日銀は会合直前まで経済・物価情勢や為替を含めた金融市場動向を入念に点検し、最終的に判断する。
足元の日本経済について日銀は、世界的なAI関連需要の拡大や原油価格が落ち着いていることなどから、下振れリスクは低下しているとみている。こうした需要面の物価押し上げ圧力に足元の円安進行が重なり、従来よりも利上げペースが速まる可能性を意識する必要があると一部の関係者は指摘した。
日銀では利上げペースを具体的に示していないが、市場では半年に1回程度との見方が多い。ブルームバーグによる6月会合直後のエコノミスト調査でも5割超が次回利上げを12月と予想した。物価の上振れリスクを踏まえ、それよりも早く追加利上げが検討される可能性がある。
足元の金利スワップ市場が織り込む日銀の利上げ確率は、9月会合までが約24%、10月会合までが約73%、年内は100%近くとなっている。
22日の円相場は対ドルで163円台前半で推移。前日の海外市場では一時163円24銭と1986年12月以来約40年ぶりの安値を付けた。片山さつき財務相は22日、為替について必要があればいつでも適切に断固たる対応を取るなどと述べたが、相場の反応は限られた。
関係者によると、引き続き緩和的な環境にある中で、基調的物価が2%に近付くにつれて、一段と政策運営を柔軟にする必要性が高まっているとの見方が日銀内にある。物価をさらに押し上げようとするのではなく、2%目標付近で定着させていくことに焦点が移りつつあるという。
日銀は4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、円安の方が原油価格上昇よりも「財・サ ービス価格全般を押し上げる」と分析。内田真一副総裁は6月会合後の会見で、円安について「予想物価上昇率や基調的な物価上昇率に影響する可能性がこれまでに比べ、メカニズムとして強くなっている」との見解を示した。
日銀は6月会合で、基調物価が目標の2%を「超えて上振れていくリスク」に言及した。関係者によると、基調の2%超えを明記したこと自体が物価上振れ抑制に向けた日銀の強い姿勢を示すものだという。基調に近いとされるインフレ予想も、想定内で強めとの評価が日銀内にある。
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