(ブルームバーグ):香港の株式トレーダーやブローカーなど数千人の金融関係者は、近く昼休みがなくなる可能性がある。これに不満を抱く人も少なくない。
香港取引所が昼休みを廃止し、取引時間を延長する検討案を示したところ、特に地場企業から批判が出ている。売買代金が増えても、勤務時間の長時間化に伴う負担を補うほどの効果があるのか疑問視する声が上がっている。
実施されれば、同取引所にとって10年余りぶりの取引時間延長となる。多くの関係者が午前中の取引処理や新規案件の売り込みに充ててきた昼休みがなくなる。勤務を交代制にできる人員を多く抱える大手証券会社に有利となる可能性もある。
協議は初期段階にあるが、取引開始を30分早めて午前9時とする案や、米国市場の序盤と重なる夜間取引を新設する案も検討されている。香港市場の取引時間を海外市場に近づける狙いもある。
香港証券及期貨専業総会のデーヴィッド・ウォン永久名誉会長は「変更に必要な人員と資源が余りに大きく、得られる成果に見合わない」と述べた。
アジアの金融拠点である香港において、取引時間の変更は長年にわたり慎重に扱われてきた。2011年に昼休みを2時間から1時間に短縮する案が提示された際には、ウォン氏が抗議デモを組織し、株式ブローカーや飲食店従業員約1000人が参加した。取引所は最終的に変更を実施した。
ニューヨークやロンドンなど欧米の金融市場では日中を通じて取引が続く一方、アジアでは昼休みを設ける市場が多い。東京やシンガポール、上海、深圳などの主要市場にも昼休みがある。
多くの世界的な大手銀行や証券会社は昼食時間を交代制にし、休憩なしで取引される先物や他のアジア市場を担当できる体制を整えている。
一方、香港株や中国本土株を中心に扱う小規模証券会社は、より大きな影響を受ける。金融機関が集まる中環や金鐘、上環地区では、若手社員が昼休みを使い、午前中の取引記録を照合して事務作業を済ませる。その後、午後の取引開始前に地元の飲食店でワンタン麺やチャーシュー飯を食べるのが一般的だ。
シニアトレーダーや証券会社経営者も、昼休みを顧客との面会に充てている。顧客との昼食は頻繁に行われ、関係を深め、市場見通しや情報を交換する機会となっている。新たな取引時間が導入されれば、こうした活動は難しくなる可能性がある。
香港取引所の担当者は、国際金融センターとしての「香港の競争力を継続的に高め」、香港市場へのアクセス改善の機会を検討する方針を示した20日の発表資料を参照するよう求めた。
取引時間延長、世界で広がる
香港取引所の動きは、世界の取引所がより長い取引時間を設けようとする流れを反映している。韓国取引所は、1日の取引時間をほぼ倍増させて12時間とする案を示した。インドネシア証券取引所は昨年、取引時間を開始前か終了後のいずれかに1時間延長する案を検討すると明らかにした。
台湾では年末までに端株取引の開始を午前9時に早める計画で、通常取引も最大90分延長する案を検討していると報じられている。
取引時間延長の支持派は、市場のグローバル化と、より柔軟に取引したいという投資家の需要を踏まえれば、変更は必要だと主張する。
インタラクティブ・ブローカーズのアジア太平洋地域マネジングディレクター、デーヴィッド・フリードランド氏によると、時間外取引や取引時間の延長には既に需要があり、海外投資家との取引時間の重なりも増える。
ただ、全ての市場関係者が納得しているわけではない。夜間取引は流動性が低くなると見込まれ、他市場の投機的な参加者を呼び込む可能性があるとの懸念も出ている。
アジア証券業金融市場協会の株式・ポストトレード部門責任者、リンドン・チャオ氏は「市場間の激しい競争が一段と強まり、ごく一部のデイトレーダーの利益にしかならず、健全な金融市場全体を損なう可能性があると考えている」と語った。
香港市場の取引時間が延長された場合、中国本土の取引所がどう対応するかも重要な問題となる。中国本土の投資家が香港株を売買できるサウスバウンド・ストックコネクトでは、約600銘柄が取引対象となっている。25年の香港株式市場では、売買代金の約23%をサウスバウンド取引が占めた。
上海証券取引所と深圳証券取引所の担当者にコメントを求めたが、返答はなかった。
市場関係者からは、取引を活発化させるには、より有効な方法があるとの声も出ている。フリードランド氏は、クロスマージン制度(複数の市場にまたがって証拠金を相殺する仕組み)による資本の有効活用や手数料引き下げが、あらゆる時間帯の取引拡大につながると指摘した。
高裕証券のエグゼクティブ・ディレクター、トーマス・イップ氏も、取引時間を延長するより、取引コストの引き下げやデリバティブ(金融派生商品)の拡充の方が競争力向上につながると述べた。
昼休みをなくす提案について、同氏は「必要性に乏しい断片的な改善」に過ぎないと評した。
原題:Hong Kong Brokers Cling to Lunch Break Exchange Wants to Scrap(抜粋)
--取材協力:April Ma、Kevin Dharmawan.
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