(ブルームバーグ):韓国の資金力のある個人投資家が、過去に大きな損失をもたらしたレバレッジ商品の取引に再び殺到している。株式市場の変動が激しくなる中で、ポジションの急激な巻き戻しへの懸念が高まっている。
韓国は一定の資産要件を満たす投資家に差金決済取引(CFD)を認めている。CFDは、原資産を保有せずに価格変動へのエクスポージャーを得られる金融商品。米国では個人投資家による利用が禁止されている。
韓国金融投資協会のデータによれば、20日時点の残高は約3兆3000億ウォン(約3600億円)と、過去1年間で約3分の2増加した。CFDの魅力はレバレッジの高さにある。投資家はポジション価値のわずか40%の資金を差し入れるだけで、市場全体へのエクスポージャーを得られる。
2023年に市場に混乱を引き起こしたことで規制が強化されたが、今このタイミングでCFD取引が再び拡大していることは気がかりだ。半導体株に連動するレバレッジ上場投資信託(ETF)がすでに株式相場のボラティリティーを高めており、当局は単一銘柄を対象とするレバレッジETFの新規上場を停止している。
ジャナス・ヘンダーソンの分散型オルタナティブ運用チームでポートフォリオマネジャーを務めるナターシャ・シブリー氏は、「システム全体のレバレッジが高まるほどリスクは増大する」と指摘。
「CFDや信用取引を通じて韓国の半導体株を保有する他の投資家が強制的にポジションを清算させられれば、株価に影響を与え、値動きをさらに増幅させる」と述べた。
アルケゴスも利用
CFDは市場への影響という点でレバレッジETFと似た側面がある。取引相手となる金融機関(通常は銀行)は、自らのエクスポージャーをヘッジするため、原資産となる株式を保有することが多い。
そのため、顧客のCFDポジションが強制的に解消されると、ヘッジ目的で保有していた株式も売却され、レバレッジETFのリバランスと同様に相場変動を増幅させる。
違いは、ETFのリバランスが毎日実施されるのに対し、CFDの強制売却はマージンコール(追加証拠金請求、追い証)が発生した際に行われる点だ。ドバイを拠点とするアルケビウム・キャピタルのマクサンス・ヴィソー最高投資責任者(CIO)によると、CFDの市場への影響は「より断続的で、より激しいものになる」という。実際、過去に例がある。
2023年には複数の韓国ガス関連株でCFDポジションに対するマージンコールが発生し、それらの銘柄は連日ストップ安となった。当時、CFD取引の96%以上を個人投資家が占めていて、この急落を受けて当局は規制を強化した。その結果、CFD残高は過去最低水準まで落ち込んだ。
CFDはまた、2021年に経営破綻した投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントが市場でレバレッジをかけるために利用していた金融商品の一つでもある。当時は銀行が数十億ドル規模の保有資産を強制売却したことで、同社は劇的な破綻に追い込まれた。
ヴィソー氏は「すでにこうした展開をわれわれは経験している」と述べ、「CFDは店頭市場という独自の流動性プールで取引されている。そのプールが一斉に取引所市場で売却を迫られると、秩序ある調整ではなく、流動性が急速に失われる事態が起きる」と警告した。
約2500%増
CFDは米国では個人投資家には認められていない。一方、韓国では過去5年間のうち1年間にわたり、株式またはデリバティブ(金融派生商品)の月末残高が3億ウォン以上あった投資家はCFDを取引できる。足元の株価上昇も人気を押し上げている。
金融投資協会のデータによると、7月20日時点で韓国総合株価指数(KOSPI)を対象とするCFDの買いポジションは過去最高水準近くまで積み上がっていた。個別銘柄では、この1年間の資金流入は市場をけん引した銘柄に集中している。
SKハイニックスのCFD残高は約2500%増の2350億ウォン、サムスン電子は5倍の2170億ウォンに拡大した。現在では、両社のレバレッジETFを対象としたCFDも取引可能となっている。
韓国のCFD市場は、3兆9000億ドル(約636兆円)規模の株式市場と比べれば依然として小さい。しかし、信用取引残高が6月に過去最高を記録する中、市場関係者やアナリストはCFDが抱えるリスクに警鐘を鳴らしている。
韓国資本市場研究院の金融サービス部門長イ・ヒョソブ氏は、「レバレッジをかけたポジションが一方向に偏り、証拠金を維持できなくなれば、強制清算が始まり、市場のボラティリティーをさらに増幅させる可能性がある」と語った。
原題:High-Risk Bets That Burned Korean Traders Are Making a Comeback(抜粋)
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