米国とイランがホルムズ海峡の再開に向けた暫定合意に達したことで、原油相場は今年最長の下落局面に向かった。供給回復への期待が高まり、ウォール街の大手銀行も価格見通しを引き下げた。

国際指標の北海ブレント先物は、1バレル=83ドルを下回り、4日続落した。米国産の指標となるウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物も、81ドル近辺で推移した。

米国とイランは19日にスイスで暫定合意に署名する予定だが、覚書の文面はまだ公表されていない。

モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックス・グループはいずれも、今後数四半期の価格見通しを引き下げた。ゴールドマンは、ペルシャ湾岸地域からの輸出が7月末までに戦争前の水準へ回復すると想定しており、従来予想より1カ月前倒しとなる。

トランプ米大統領は、19日にはホルムズ海峡の通航が再開されるとの認識を示した。フランスで開催されている主要7カ国首脳会議(G7サミット)で記者団に対し、「すでに多くの航路が利用可能になっている」「海峡は開放され、通航料もかからない」と語った。

原油価格は3月上旬以来の安値まで下落し、戦争中に記録した上昇分の大半を打ち消した。米金融当局が今週の金利政策決定に向けた判断を進める中で、インフレ圧力の緩和につながる動きだ。一方で、海運の安全性や運用ルール、実際に無料で通航が維持されるのかなど、暫定合意の実施を巡る不透明感は依然として残っている。

詳細が明らかでないことから、市場は慎重姿勢を崩していない。ペルシャ湾岸のエネルギー当局者によると、原油が再び海峡を通過できるようになるかについて買い手からの問い合わせが殺到している。また海運業界幹部やトレーダーらは、船舶をホルムズ海峡に向かわせる前に、より明確な情報が必要だとしている。

それでもモルガン・スタンレーは、合意成立後には、原油現物取引の世界的指標であるデイテッド・ブレント(積載日確定後のブレント原油)価格について、7-9月期には1バレル当たり平均90ドルになると予想した。従来予想の100ドルから引き下げた。10-12月期の見通しも15ドル引き下げ、80ドルとした。

「なお多くの事項について交渉が必要であり、主要リスクも残るが、現時点では紛争の緊張緩和とホルムズ海峡経由の石油輸出増加に向けた重要な一歩だ」と、アナリストのマルタイン・ラッツ氏らはリポートで指摘した。その上で、「9月までに生産の50%、12月までに80%が回復するとみており、従来想定よりやや速い」と述べた。

ゴールドマン・サックスでは、アナリストのダーン・ストルイベン氏らが、10-12月期のブレント平均価格を80ドルと予想した。従来予想を10ドル引き下げた。

RBCキャピタル・マーケッツはより慎重な見方を示した。アナリストのヘリマ・クロフト氏らはリポートで、「(戦争開始前の)2月27日に近い水準へ戻るまでには数カ月を要すると考えている」と指摘した。また、「ホルムズ海峡の輸送量のピークは、すでに過去のものとなった可能性がある」とも述べた。

市場環境の変化を反映し、ブレント原油のプロンプトスプレッド(直近2限月間の価格差)は縮小している。依然として期近物価格が先物価格を上回るバックワーデーションの構造にあるものの、16日時点の価格差は1バレル当たり83セントにとどまった。1カ月前には4ドルを超えていた。

市場環境をさらに見極める材料として、17日には国際エネルギー機関(IEA)が月次見通しを公表する予定だ。IEAは主要国にエネルギー政策面で助言しており、戦争中には加盟国の戦略備蓄放出の調整にも関与した。

ホルムズ海峡がイランと米国によって事実上の封鎖状態にあったため、中東からの石油輸送量は減少し、民間および戦略備蓄の取り崩しが進んだ。15日に公表されたデータによると、米国の緊急原油備蓄は1983年以来の低水準となった。

原題:Oil Suffers Worst Run This Year as Hormuz Deal Reshapes Outlook(抜粋)

--取材協力:David Wethe.

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