(ブルームバーグ):イランとイスラエルはともに、相手の攻撃を抑制することを表明した。攻撃の応酬が激化して和平交渉が頓挫しかねない事態となる中、トランプ米大統領は緊張緩和を呼びかけていた。
イスラエルのネタニヤフ首相は8日のテレビ演説で、当面はイランへの攻撃を停止する考えを示した。これに先立ち、イスラエルのニュース放送局N12は、イスラエル軍が親イラン武装組織ヒズボラと交戦しているレバノン南部への攻撃については、今後数日も最大規模で継続されると報じていた。
一方でイランも、イスラエルに対する軍事作戦の終了を発表した。ただし、イスラエルがレバノン南部などへの攻撃を継続するなら、「これまでよりもはるかに苛烈で痛烈な行動を取ることになる」とイランの中央軍司令部は警告した。イランの準国営ファルス通信が声明を引用して伝えた。
ホルムズ海峡付近では、米陸軍の攻撃ヘリコプター「アパッチ」が墜落した。機械的な不具合に見舞われたのか、それともイランによって撃墜されたのかは不明だと、ニューヨーク・タイムズ紙が8日深夜、事情に詳しい関係者2人の話として報じた。
同紙によると、搭乗していた乗員2人は無事救助された。米軍当局者は、コメント要請に直ちには応じなかった。
トランプ氏は、ニューヨークでNBAの試合を観戦した後、この件について記者団から問われ、パイロットは無事だとした上で、9日には報告書が公表されるとの見通しを示した。
イスラエルとイランが攻撃抑制を表明する前には、トランプ氏が8日にネタニヤフ氏と電話会談をしていた。ホワイトハウス当局者は電話会談があったことを認めたが、協議内容の詳細は明らかにしなかった。
ネタニヤフ氏は、イスラエルには自衛権があるとトランプ氏に伝えたと述べた。また、ヒズボラに対するイスラエルの軍事行動が続く場合は新たな攻撃で報復するとしたイランの警告については、「そのような理屈は受け入れられない」と退けた。
こうしたやり取りは、戦争終結に向けた協議が最終局面にあるとの認識を示してきたトランプ氏が、事態のさらなるエスカレーションを回避しようとしていることを示している。
トランプ氏は米国時間8日朝、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、停戦に向けた最終協議は「無知や愚かな行動に邪魔されない限り、順調に進展している」と述べた。
ただしその数時間後、イランのペゼシュキアン大統領は、同国は戦場も交渉の場も放棄していないとSNSに投稿した。
トランプ氏は8日夜、サウスカロライナ州の共和党支持者向けオンライン集会で、これまで何度も繰り返してきたように戦争の迅速かつ成功裏に集結するとの見通しを示した。
「今後2週間で全面勝利を宣言し、本当に勝利することになる。完全な勝利になる。非常に近いうちに実現し、原油価格は急落するだろう」とトランプ氏は述べた。
原油価格は8日に約1%上昇し、北海ブレント先物の終値は1バレル=94ドル近辺となった。ただ、イランとイスラエルが攻撃停止に向かう兆候が示されたことで上げ幅は限定的だった。
「今回のエスカレーションは、イランが音を上げるまで現状維持を続けられるとトランプ氏に助言していた人々が誤っていたことを、明確に示している」と、国際危機グループのアリ・バエズ氏は述べた。
焦点は依然として、ホルムズ海峡を経由するエネルギー輸送が本格的に再開するかどうかに集まっている。週末には商業船舶の通航が徐々に再開されたが、リスクを懸念して一部の船舶は位置情報を発信するトランスポンダの電源を切った状態で航行した。
新たな緊張激化の火種として、イエメンの親イラン武装組織フーシ派は、イスラエルに向けてミサイル攻撃を実施したと表明した。また、紅海におけるイスラエル側の海上航行に対し「完全かつ全面的な禁止措置」を課すとテレグラムに投稿した。
イスラエル国防軍は8日夜、エイラート周辺で警報が発令された後、イエメンから飛来した「不審な航空目標」を迎撃したと発表した。
7日にはイランとイスラエルの間で攻撃の応酬があった。イスラエルはイランによる攻撃を迎撃するとともに、テヘランや、イラン南西部マハシャールにあるカルン石油化学会社を攻撃した。ファルス通信によると、イランは自国のエネルギーインフラへの攻撃が続く場合、イスラエルと米国、およびその中東同盟国に関連する全ての石油・ガス施設を攻撃対象にすると警告した。
イランは、イスラエルによるベイルート攻撃を受けて軍事行動を開始した。イランがヒズボラ防衛のために軍事介入した異例の事例となった。
今回の戦闘は、4月8日に発効した停戦合意に対する最大の試練となった。この合意により、米国とイスラエルが2月にイランへの空爆を開始して始まった戦争はいったん停止していた。この戦争開始以降に中東各地で数千人が死亡。世界のエネルギー供給網に混乱が生じて原油価格が上昇し、世界的なインフレ加速への懸念を強めている。
トランプ氏は7日にも、イスラエルとイランに対し新たな攻撃の自制を要求。戦闘が再び激化すれば、イランと米国が模索する新たな60日間の停戦合意に向けた取り組みが頓挫しかねないと警告した。停戦案は、恒久的な戦争終結を目指す包括的合意を巡る交渉への道筋となる。
米国とイランが戦争終結に向けた交渉を始めて以来、イスラエルはいかなる合意もレバノンの親イラン武装組織ヒズボラとの戦いには適用されないとの立場をとり続けている。一方、イランはヒズボラを停戦合意の枠組みに組み込もうとし、トランプ氏は合意確保を優先させている。
トランプ氏は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)との電話インタビューで、米国がイランとの交渉で取り決めた合意がどんなものであれ、ネタニヤフ氏は受け入れざるを得ないとの考えを示し、「決定権があるのは自分だ。全ての決定権は私にある。ネタニヤフ氏ではない」と語った。
原題:Iran, Israel Pledge to End Attacks That Threatened Talks (4)(抜粋)
(第4段落以降にヘリ墜落の情報を加えて更新します)
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