(ブルームバーグ):景気に関する好材料は、再び株式市場にとって悪材料となるのか――。
このところウォール街で意識されているのはその点だ。労働市場やインフレに関する重要指標が控える中、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏が上院承認を待つ状況にある。同氏は利下げに積極的とみられている。
しかし、力強い景気と高止まりする原油価格が重なり、年内の利下げ期待はほぼ消滅し、株式市場にとって追い風は弱まりつつある。実際、債券市場では次の政策変更が利下げではなく利上げになるとの見方が強まっている。こうした見方は、8日に発表される4月の雇用統計や、インフレ加速が見込まれる12日発表の消費者物価指数(CPI)を受けて、さらに変化する可能性がある。
チャールズ・シュワブのマクロ調査・戦略責任者ケビン・ゴードン氏は「インフレ見通しが悪化する一方で労働市場の見通しは一段と安定しており、この組み合わせの中で利下げのハードルは高くなっている」と指摘。「イラン戦争の長期化を主因として、労働市場が再び引き締まり、インフレの沈静化に時間がかかるようであれば、金融環境の引き締まりを通じて、相場は調整局面に入るリスクがある」と述べた。
3月のCPIは約4年ぶりの大幅な上昇となり、その背景には中東情勢がある。労働統計局(BLS)は先月、ガソリン価格の記録的な上昇が月次の上昇分の約4分の3を占めたと説明した。ブルームバーグが実施した調査の中央値によると、4月のCPIは前年比3.8%と、3月の3.3%から加速すると予想されている。
ウェルズ・ファーゴ投資研究所のサミーア・サマナ氏は、エネルギー価格の上昇とインフレがFRBに金利を維持させるとみている。一方、近くウォーシュ氏が後任議長となり、FRBがバランスシート政策を見直す可能性があると指摘。そうなれば、長期金利に上昇圧力をかける恐れがある。
サマナ氏は「利下げが見送られても株式相場の下落要因になるとは考えていない」と述べた。ただ、株式市場の内部では影響が生じるとし、利下げへの依存度が高い小型株よりも、大型株や中型株が相対的に優位になる可能性が高いと指摘した。
債券市場は年内の利下げをもはや織り込んでいないものの、借り入れコストの上昇も完全には織り込んでいない。第1四半期の決算シーズンでは、人工知能(AI)への大規模投資に支えられた力強い利益成長が示され、現在の金利水準がそれを妨げていないことが明らかになった。戦争による景気の不透明感やインフレがある中でも、S&P500種株価指数は過去最高値を更新している。これまでに決算を発表した約400社のうち約83%がアナリスト予想を上回り、全体の利益は26%増と高い伸びを示した。
BCAリサーチのノア・ワイスバーガー氏は株式相場の上昇について、中東紛争に伴う依然として大きなリスクを無視したものではないと指摘。むしろ市場は「投資サイクルの強まりに反応している」と述べた。
「言い換えれば、市場は高インフレ下での強い成長を織り込んでいる。スタグフレーションではないが、インフレのない景気循環の初期のような成長の上振れでもない」と語った。
もっとも、市場は原油価格が1バレル=100ドルという現実におおむね適応しているように見える一方、不確実性が続いた場合の影響の大きさに同氏は注意を促している。
「先行きの見通しを巡る不確実性やインフレ期待の不安定化は、株式にとって悪材料となる」と指摘。「必ずしも原油価格上昇が売上高や利益率に直接影響を及ぼすとは限らず、むしろリスク選好やインフレ懸念、バリュエーションを通じて影響する可能性が高い」と述べた。
原題:Time to Fight the Fed? Stocks Rally Faces Dashed Rate-Cut Hopes(抜粋)
--取材協力:Geoffrey Morgan.
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