平和国家の転換か、抑止力の強化か

一方で、武器輸出解禁のメリットの側面もあることは事実だ。

特に、日本製の武器を他国と相互利用することのメリットについてはポジティブな見方が多い。海上自衛隊の幹部の1人は「同じ道具(装備)を使うことができれば、その恩恵は倍以上だ」とルール改定に期待を寄せている。

例に挙がるのが補給や整備の効率化だ。同じ護衛艦を運用している国の船が日本に修理のために寄港した場合、修理のための部品はその都度、空輸などを必要とするため時間も技術も要してきた。今後、同じ武器を使う国が増えれば、共同訓練や災害救助の際に、部品の融通や技術情報の共有が円滑に行えるほか、実際の運用などにかかる時間も大幅に削減できる。
また、通信規格やシステムが共通化されることで、戦術情報のリアルタイムな共有が可能となり、結果として日本や地域全体での抑止力を大幅に向上できると考えられている。

日本と他国がバラバラの装備で動くのではなく、共通の武器やプラットフォームで訓練を重ねることで、有事の際に即座に一つの部隊のように機能することが可能になることも期待されている。特に、インド太平洋地域の抑止力の強化を目指す日本にとっては、中国を念頭にした潜在的な脅威に対する強いメッセージとなり、力による現状変更を思いとどまらせることができることも期待されている。

こうした武器輸出解禁をうけ、政府も早速動き始めている。小泉防衛大臣は5月の大型連休中にフィリピンとインドネシアを訪問し、日本の武器輸出について議論を行う見通しだ。フィリピンは日本の中古護衛艦に関心を寄せていて、仮に輸出に向け議論が本格化していけば、武器輸出の第一号案件となる可能性もある。

高市総理は今年1月の衆議院の解散表明の会見で「国論を二分するような大胆な政策・改革にも果敢に挑戦していきたい」と語っている。武器輸出については「平和主義国家としての歩みは変わらない」と主張しているが、報道各社の世論調査などでも、まさに現状は国論が二分のままだ。

一度輸出された装備品が、時の政権の判断や国際情勢の変化によって「意図せぬ形」で使用される懸念は、どれほど厳格な審査制度を設けたとしても完全に拭い去ることはできない。

重大な転換期において求められるのは、決定プロセスの徹底した透明化と、安全保障環境の冷徹な現状分析に基づく丁寧な説明だ。国民を置き去りにした既成事実化は、制度そのものの正当性を失わせるだけでなく、将来的な国家の進路を危うくしかねない。

「国民の理解」という“最後の歯止め”が機能し続けること。それこそが、最重要かつ不可欠な条件となるのではないだろうか。

TBS報道局政治部・防衛省担当 渡部将伍