米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイの最高経営責任者(CEO)として初の年次株主総会を迎えるグレッグ・アベル氏は、伝説的な前任者がほとんど直面することのなかった問題に直面している。自社株の低迷だ。

時価総額1兆ドル規模のバークシャー・ハサウェイ株は、かつては安定して市場平均を上回るパフォーマンスを見せていたが、ウォーレン・バフェット氏が約1年前に引退を発表して以降、市場全体に対して出遅れている。

4月29日までの1年間で、バークシャーのクラスB株は騰落率でS&P500種株価指数を37ポイント超下回っており、2000年以降で最悪の1年となっている。この期間にバークシャーの時価総額は1390億ドル(約21兆7000億円)減少した。

クラフト・ハインツなど保有銘柄の不振が一因となっているほか、人工知能(AI)関連株に資金が集中し割高感の強い市場環境も、手元に3730億ドルを抱えるバークシャーの投資機会を乏しくしている。

5月2日に予定される株主総会で、アベル氏はこうした点に触れるとみられる。しかし、バークシャー株の低迷には、対処がより難しい別の要因もある。「オマハの賢人」として知られるバフェット氏が去ったことで、一部の投資家はバークシャーの弱点を以前ほど大目に見なくなっている。バフェット氏と故チャーリー・マンガー氏がかつて得ていた信頼の一部をアベル氏が築くまで、こうした見方が続く可能性がある。

2019年から同社株を保有するハドソン・バリュー・パートナーズのクリストファー・デービス氏は「投資家として、アベル氏の『踏襲路線』を歓迎している」と語る。一方で、「市場は、新たなトップの下でも従来通り会社が機能することを示す証拠として、バークシャーらしい投資を実際に実行できるかどうかを見極めようとしているようだ」と指摘した。

バフェット・プレミアム

バークシャー株の低迷は、1月にCEOに就任したアベル氏が直面する課題の大きさを浮き彫りにしている。同氏は、歴史上屈指の投資家とされるバフェット氏の影響を色濃く残す企業のかじ取りを担う。バークシャーの広報担当者はコメントを控えた。

バフェット氏の優れた銘柄選定と巧みな資本配分に支えられ、同社株は複合企業としての61年の歴史を通じて、S&P500種を安定して上回ってきた。近年はその差が縮小しているものの、実績は依然として際立つ。

バフェット氏の下、バークシャーのクラスB株は1997年以降、年平均11%の上昇を記録してきた。同期間のS&P500種の年率トータルリターンを1ポイント上回る。投資家は「バフェット・プレミアム」と呼ばれる上乗せ評価を受け入れ、同社株を概して市場全体より高く評価してきた格好だ。

アベル氏は投資やリスク管理でバフェット氏の手法を踏襲する方針を示しているものの、同氏が前任者に近い投資手腕を発揮できると株主が確信するまでには、なお時間を要する可能性がある。

バフェット氏の退任に伴う懸念は、バークシャーの株価純資産倍率(PBR)にも表れている。この指標は過去1年で低下し、現在は約1.4と、昨年の株主総会前の約1.8から下がっている。もっとも、バークシャーの歴史を通じて、この水準はそれ以上にもそれ以下にも推移してきた。

UBSグループのアナリスト、ブライアン・メレディス氏は「バリュエーションを踏まえると、バフェット氏の退任は、バークシャー株を保有していた一部の投資家にとって売却のきっかけになった面がある」と述べた。

複数の株価圧迫要因

長年くすぶってきた株価下落の要因が、バフェット氏の退場によって一段と浮き彫りになっている側面もある。保険事業で収益の伸びが鈍く、利益も予想を下回ったことが、投資家心理の重しとなっている。

また昨年は、クラフト・ハインツとオキシデンタル・ペトロリアムへの投資で多額の減損を計上し、買収巧者としてのバークシャーの評価に傷がついたと、CFRAリサーチのアナリスト、キャシー・サイファート氏は指摘する。

情報開示の乏しさも、株価低迷の一因とされる。バークシャーは同規模の上場企業では例外的にIR(投資家向け広報)機能を持たず、毎年5月にオマハで開く株主総会以外に、投資家向けイベントも原則開催していない。

バフェット氏とマンガー氏が約60年にわたり同社を率いていた間は、こうした特徴も許容されてきたが、株価の低迷は、株主がアベル氏に同様の信頼をまだ寄せていないことを示している。

さらに、市場全体のバリュエーションの問題もある。中東情勢の緊張にもかかわらず、AIへの期待が株価を過去最高水準へと押し上げており、株式は多くの指標で割高な水準にある。いわゆる「バフェット指標」でも同様だ。市場全体の時価総額を国内総生産(GDP)で割ったこの指標は、現在220%超と過去最高に近い水準にある。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マシュー・パラゾラ氏は「市場はアベル氏に対し、バフェット氏のような長期的な大ヒットを期待しているわけではないが、割安株をどのように見極めるのかを注視している可能性が高い。こうした投資は本質的に時間を要する」と述べた。

原題:Warren Buffett’s Handpicked CEO Gets a $139 Billion Wake-Up Call(抜粋)

--取材協力:Matt Turner.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.