(ブルームバーグ):子どものスマートフォン依存への懸念が広がるなか、米国ではレトロな外観の「固定電話」が人気を集めている。
カンザスシティ近郊に住むジャスティン・フィン氏の家庭では、小学生の子ども2人が帰宅すると、数分のうちに電話が鳴り始めることも珍しくない。ただ、通話に使うのはスマホではない。固定電話を模したWi-Fi対応機器の「Tin Can(ティン・キャン)」だ。
価格は100ドル(約1万5900円)。同製品は2025年4月の発売以降、口コミを中心に人気が広がり、数十万台を販売するヒットとなった。大規模なマーケティングは行っておらず、資金調達も昨夏の350万ドルと、12月にグレイロック・パートナーズが主導した1200万ドル規模のシードラウンドにとどまる。
ティン・キャンはコンセントに接続して使用し、スピーカーフォンや短縮ダイヤル、留守番電話などの機能を備える。鮮やかな色のバリエーションもあり、端末同士や緊急通報への通話は無料で利用できる。月額10ドルを支払えば、保護者が承認した外部番号との発着信も可能だ。
米国とカナダで販売されているティン・キャンは、子どもの長時間のスクリーン利用への対策を模索する保護者や教育関係者、政策立案者の間で受け入れられている。
オーストラリアが16歳未満のSNS利用を禁止したのを受け、各国でも若年層向けの規制を検討する動きが広がる。米国では先月、これらのプラットフォームへの依存が精神的な問題を招いたとする訴訟で、メタ・プラットフォームズとアルファベット傘下グーグルの責任を認めた画期的な陪審評決が示され、議論が活発化した。
フィン氏の家庭は、保護者主導の取り組みの一環としてティン・キャンを無償で学校から受け取った。こうした動きは広がっており、児童のSNS依存を早期に抑える狙いがある。
同製品を手がけるシアトルのスタートアップ、ティン・キャン・アンテクノロジーズによると、学校からの注文は最も成長が速い分野の一つだ。教育機関からの需要は「圧倒的」で、数千人の学校管理者が一括導入を検討し、コミュニティー全体での利用に向けた調整を進めているという。
同社のチェット・キトルソン最高経営責任者(CEO、38)は約1年半前、子どもの放課後の遊びの約束を巡る不安をきっかけに同社を創業した。1990年代に育った同氏にとって、固定電話は社会的なつながりの基盤だったという。
現在の子どもがテキストやビデオ通話でやり取りすることは、コミュニケーション能力の形成に必ずしも寄与しないと同氏は考えている。「会話の間(ま)をどう扱うかを学ぶことが重要だ」と話し、音声通話に特有の沈黙の時間に言及した。
実際、フィン氏の家庭では、子どもの態度に明確な変化が見られたそうだ。「話し方がより丁寧になり、相手の話をよく聞くようになった。全体として自信も高まった」という。
キトルソンCEOは、初期の口コミによる成功の背景には、スマホへの警戒感の高まりと、X世代やミレニアル世代の親の間にある懐かしさの双方があるとみている。「いかにも今どきの端末をつくることもできたが、親が直感的に理解できるものにしたかった。自分たちのシンプルだった子ども時代を思い起こさせる製品だ。それが成長の加速につながった」と話す。
同氏は現在の最大の課題として、急速な成長への対応や人材確保、インフラ投資、安定したサービスの維持を挙げる。クリスマス当日に利用開始が急増した際にはサーバー障害が発生し、同社は不安定な状態について謝罪した。
「質の高い安定した製品とサービスを提供することが我々の責務だ。無理なく着実に実現していきたい」としている。
原題:The Hottest Phone for Kids Right Now Is a $100 Landline (1)(原題)
--取材協力:Rocio Fabbro.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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