イラン情勢の緊迫化で原油や燃料の供給不足が世界のサプライチェーンを揺るがす中、自動車部品から包装材まで幅広く使われるアルミニウムの調達リスクが一段と高まっている。中東への依存度が高い日本にとって、代替調達の確保は待ったなしの課題となっている。

イラン戦争が始まって「まだ1カ月だが、まもなく自動車部品の製造に支障が出るのはほぼ確実だ」。愛知県蟹江町のアルミ押出加工メーカー、加藤軽金属工業の加藤大輝社長はこう懸念を示す。中東地域からの供給がストップし、同社では調達先の切り替えを計画している。

加藤軽金属工業の加藤社長

建設資材や自動車部品向けにアルミ製品を製造している同社は、毎月約400トンのアルミを輸入している。そのうち中東のドバイとオーストラリアが約200トンずつだ。

5月までは在庫でなんとか対応するものの、加藤氏は、「情報を仕入れながら、今みたいなワーストシナリオも考えながら最善を尽くしていくしかない」と述べた。

日本アルミニウム協会によると、日本は2025年に中東から約59万トンのアルミ(総供給量の約30%)を輸入している。また、日本自動車工業会によると、国内自動車メーカーはアルミ輸入の70%を中東に依存している。

S&Pグローバルのディレクター、西本真敏氏は、国内自動車生産へのリスクが大きいのは、ホルムズ海峡への依存度が高い東南アジア、中国、韓国、そして日本だと話す。その中でも、「地政学的なリスクの影響を一番受ける可能性があるのは日本だ」と指摘する。

サプライチェーンの混乱

アルミは鉄に次いで広く使われる金属で、自動車のエンジン、電子機器や建材、ビール缶やポテトチップスの袋に至るまで幅広く使われる。サプライチェーンが途絶えれば、国内製造業への影響は特に大きい。

イランでの戦争により、同地域から世界に向けたサプライチェーンは混乱に陥った。日本アルミニウム協会企画部門長の飯田康二氏は、特に懸念されるのが在庫余力の乏しい中小メーカーへの影響だと指摘。「長引けば大変な影響が出るという印象を受けている」と話した。

自工会会長でトヨタ自動車副会長の佐藤恒治氏も3月下旬、中東情勢の混乱で物流や材料調達に徐々に影響が出ていると明らかにしていた。特に中東依存度が高いナフサとアルミについて、混乱が長引けば「材料調達上の課題は出てくる」と述べた。

通常、日本のメーカーやサプライヤーは、部品や原材料について約2カ月分の在庫を抱えていることが多い。裏を返せば、4月下旬から5月初旬にかけて徐々に深刻な事態に見舞われる企業が出る可能性がある。トヨタの広報担当者はアルミニウムや供給不足の見通しについてコメントを控えたが、状況を注視していると述べた。日産自動車の広報担当者は、「生産や物流の調整を含め適切な対応を講じている」とした。

4月上旬、米国とイランは2週間の停戦に合意した。しかし、ホルムズ海峡が開放されても、供給がすぐに回復するかは不透明だ。精錬所の再稼働には時間がかかるほか、ペルシャ湾に滞留する数百隻の船舶による物流のボトルネック解消にも時間を要するため、地域からの供給制約は数カ月続く可能性がある。

JPモルガン・チェースのアナリストは先週、こうした状況について、業界は容易には抜け出せない「ブラックホール」に入ったと警告した。

Photographer: Louise Delmotte/Bloomberg

高騰するアルミ価格

ホルムズ海峡封鎖などによるサプライチェーンの寸断に加え、主要な精錬所の操業停止も伝えられている。こうした状況を背景にアルミ価格は上昇基調にある。

ロンドン金属取引所におけるアルミ先物価格は、2月下旬に戦闘が始まって以来、約13%上昇した。攻撃を受けた2施設の年間生産能力は合計320万トンで、湾岸協力会議(GCC)諸国全体の生産量は600万トン超にのぼる。

イランのミサイル・無人機攻撃を受けて大きな被害を受けたアラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ・グローバル・アルミニウム(EGA)は、中東最大のアルミ生産業者だ。同社は、攻撃を受けたアル・タウィーラ製錬所の完全復旧には、最長で1年を要する可能性があると明らかにした。

加藤社長は、家族を抱える社員の生活を守るためにも、「その場その場で適切に対応していくしかない」と話す。遠い紛争の余波はすでに生活のすぐそばに迫っている。

(訂正前の記事で加藤軽金属の住所や社長名などを訂正しました)

(西本真敏氏の表記を訂正しました)

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