イランの首都テヘランの一部では、29日のミサイル攻撃により停電が発生した。イランおよびその代理勢力が週末にかけて米国の同盟国に攻撃を加える中、さらに数千人規模の米軍要員がこの地域に展開した。

米海軍の強襲揚陸部隊の到着に加え、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が戦闘に加わったことで、2カ月目に入った戦争が拡大する可能性に懸念が高まっている。一方で、パキスタン、エジプト、サウジアラビア、トルコは打開策を探るため協議を行った。

マーク・キミット退役准将が今回の戦争についてブルームバーグの番組で語った

トランプ米大統領はイランと合意する用意があるとの姿勢を示した。29日に大統領専用機で記者団に対し、米国が先にイランとの停戦に向けて提示した15項目の計画について、同国がその大半に応じる姿勢を示してきたとの認識を示唆した。イラン側がどのような譲歩を提示したかは明らかにしなかった。双方が実際に交渉しているかどうかは引き続き不明だ。

イランはこれまでトランプ氏による15項目から成る提案を拒否し、戦争への賠償など、同氏が受け入れそうにない要求を突きつけている。

トランプ氏は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、イランで石油を奪取したい考えを示し、イラン産原油の輸出拠点カーグ島を掌握する可能性に言及した。

原油上昇

原油相場は30日のアジア時間の取引で上昇し、北海ブレント原油は月間として過去最大の上げとなる方向だ。週末にフーシ派がイスラエルにミサイル攻撃を行ったことを受け、取引開始直後に3%強上昇し、1バレル=116ドルを上回って推移した。

パキスタンのダール外相は、トルコ、エジプト、サウジアラビアの外相との会談後、「協議の仲介に関して、イランと米国の両方がパキスタンへの信頼を表明したことを大変うれしく思う」と述べた。ただ、両国ともに会合を持つ準備があることは示唆していない。

中間選挙の年に米国内のガソリン価格が高騰する中、トランプ米大統領は交渉を求めているが、イランと米国が近く和平交渉に入る兆しは依然として乏しい。

トランプ氏は、イランがホルムズ海峡の開放に合意しなければ発電所を破壊するとした期限を4月6日に延期した。

国営イラン通信(IRNA)によると、首都テヘランおよび近郊のアルボルズ州では、同地域の施設への攻撃を受けて電力供給が停止した。停電は1時間以内にほぼ復旧したという。

国際原子力機関(IAEA)は29日、イランのホンダブ重水製造施設が攻撃により深刻な損傷を受けたと結論付けた。重水は原子力発電所で使用されるほか、兵器級プルトニウムの生産にも利用される。この戦争の目的の一つは、イランの核能力を破壊することだとされている。

イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師は28日、約1週間ぶりにコメントを出し、戦争での支援に対してイラクの宗教当局に謝意を示した。イラン紙ハムシャハリが報じた。故ハメネイ師の息子であるモジタバ師は就任以降、まだ公の場に姿を見せておらず、米国によると、負傷している可能性があり、重傷の恐れもある。

フーシ派は28日朝、イスラエルに対して弾道ミサイルを発射した。これは米国とイスラエルによるイランの核施設への攻撃に続くもの。イランは、バーレーンおよびアラブ首長国連邦(UAE)のアルミニウム生産施設を攻撃した。

地上作戦準備

米紙ワシントン・ポストは、米国防総省が数週間に及ぶイランでの地上作戦を準備していると、匿名の米当局者の話として報じた。仮に作戦が実施される場合、まずはホルムズ海峡の開放を目標に据える可能性が高い。

ホルムズ海峡は戦争前には世界で海上輸送される石油の2割が通過していたが、現在は通航が大幅に減少し、世界石油市場で過去最大級の供給混乱を引き起こしている。

イランのガリバフ国会議長は、「われわれの兵士は米兵の地上侵攻を待ち構えている」と述べた。イランのタスニム通信が伝えた。

ホルムズ海峡は今回の戦争でイランの主要な交渉手段となっており、イランは同海峡の通航を管理する法律の策定を進めている。この法律には航行の安全、通行料の徴収、「地域の発展と進歩のための基金」の設立に関する条項が含まれると、イランのファルス通信がアリレザ・サリミ議員の話として伝えた。

パキスタンは28日、イランとの間で自国船20隻の通航が認められる合意に達したと明らかにした。一方、バーレーンは29日、イランの脅威を理由に夜間の漁船およびレジャーボートの航行禁止を発表した。関係者によると、サウジは一部の石油輸送についてホルムズ海峡を経由しないルートに振り替えており、東西パイプラインは日量700万バレルのフル稼働となっている。

フーシ派の動向

ただ、フーシ派はこうした状況を複雑にする恐れがある。現在サウジの輸出500万バレルが通過している紅海のヤンブー港は、フーシ派のミサイル射程内にある。フーシ派は、イランのほか、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラなど代理勢力に対する米とイスラエルの攻撃が停止するまで作戦を継続すると表明した。

紛争の影響が広がる中、フランスの対テロ当局は、パリの米銀バンク・オブ・アメリカ(BofA)のパリ本部近くで起きた爆破未遂事件を調査しており、中東での衝突と関係する可能性が高いとの認識を示した。

テヘランの商業地区で攻撃の被害状況を確認する人(3月29日)

イスラエルの救急当局によると、テルアビブではイランの攻撃により1人が死亡した。イスラエル軍によるレバノン南部への侵攻は週末も続き、レバノン国営通信NNAによると28日の攻撃でジャーナリスト2人が死亡した。

イスラエルのネタニヤフ首相は29日、レバノン南部の緩衝地帯の拡大を軍に指示した。SNSに投稿した動画で、北部住民の安全回復とヒズボラ壊滅に取り組む強い決意を示した。

米軍は28日、紛争開始以降に1万1000以上の目標を攻撃し、イランの艦船150隻以上を破壊したとSNSに投稿した。イスラエル軍は、テヘランのミサイル生産・保管施設を標的とした大規模な夜間攻撃を完了したと明らかにした。

各国政府や非政府組織によると、この戦争による死者は4500人を超えた。死者の約4分の3はイランで、レバノンでは1200人強が死亡した。イスラエルや湾岸諸国でも数十人が死亡し、米兵13人が死亡している。

原題:Iran Strikes Spread as US Troop Buildup Spurs Escalation Concern、Iran Strikes Spread as US Troop Buildup Spurs Escalation Concern(抜粋)

(3段落目以降にトランプ大統領の発言や原油の動向を追加して更新します)

--取材協力:Khalid Qayum、Aysha Diallo、Tony Czuczka、Arsalan Shahla、Omar Tamo.

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