(ブルームバーグ):ニューヨークのラガーディア空港で22日に発生したエア・カナダ・エクスプレス機と消防車の衝突事故を受け、航空管制システムの逼迫(ひっぱく)に対する懸念が改めて高まっている。
調査当局は事故の状況解明に着手したばかりで、操縦士2人が死亡した滑走路上での衝突の原因は現時点で不明だ。ただ、相次ぐ事故やニアミスを背景に、専門家の間では航空管制官の不足が飛行の安全性を損なっているとの懸念が広がっている。
航空管制官の不足はなぜ起きているのか
日々数十万機に及ぶ航空機の動きを調整する航空管制官は、長年にわたり人手不足の状態にある。新型コロナウイルス禍で航空需要が急減した際、多くの管制官が職を離れたことが問題をさらに深刻化させた。
旅行需要は回復しているものの、空港管制塔の人員を十分に補充するのは容易ではない。世界の航空便数は10年前を大きく上回っており、米国内および国際線の需要は今後も増加が見込まれている。
年齢要件の厳しさも、人員補充を難しくしている。米国では航空管制官を目指す場合、応募時点で31歳未満でなければならず、安全確保の観点から定年は56歳に設定されている。
英国やオーストラリアでも60歳未満での退職が求められるなどの規定がある。欧州航空航法安全機構(ユーロコントロール)に加盟する42カ国では、管制官の定年は50-67歳と幅がある。
旅客機は安全か
旅客機は依然として最も安全な移動手段だ。旅客マイル当たりの死亡率は自動車やフェリー、さらには鉄道よりもはるかに低い。
国際航空運送協会(IATA)によると、2025年の事故率は100万フライト当たり1.32件で、前年の1.42件から改善した。ただし、21-25年の5年平均(1.27件)は上回っている。また、搭乗者の死亡者数は24年が255人、25年は394人と、5年平均の198人を上回った。
一方で、過去10年で航空安全は大きく向上している。11-15年の5年平均事故率は100万フライト当たり2.19件だった。
米国の管制官不足はどの程度深刻か
米国では新型コロナ危機以前から、数十年にわたり航空管制官の不足が続いている。連邦航空局(FAA)による23年の報告では、国内で最も繁忙かつ複雑な空域を管轄する主要施設の77%で、人員配置が安全運用に必要とされる85%という基準を下回っていた。
FAAは新型コロナ禍で失われた人員の補充に向けて採用と訓練の強化を図ってきたが、補充は十分なスピードで進んでいない。
米国では24年に1800人超、25年に2026人の管制官が採用された。それでも政府監査院(GAO)によれば、25会計年度末時点の管制官数は1万3164人と、15年より6%少ない。一方で対応すべきフライト数は10%増えている。
人員確保に向けた米国の取り組みは
ダフィー運輸長官は25年、採用プロセスの簡素化や初任給の30%引き上げにより、航空管制官の採用を加速させる方針を発表した。
同長官は当時、トランプ政権による大規模な公務員削減の際にも航空管制官は解雇されなかったと説明した。一方、FAAでは人員削減の影響が及び、エンジニアや航空機認証の専門家、スタッフ支援職、航空技術システムの専門職など数百人が削減対象となった。
なぜ航空管制官の補充は難しいのか
航空管制官になるには高いハードルがある。米国では、複数の要件を満たした応募者のうちFAAの厳格な訓練プログラムに進めるのは1割未満にとどまる。
身体・心理検査やセキュリティーチェックに加え、数カ月の基礎訓練と、教室および実地での2-3年にわたる追加訓練を経て初めて資格が付与される。
英国でも初期訓練に9-13カ月、その後さらに9-24カ月の訓練が必要とされる。
市民権などの要件も候補者を絞り込む要因となる。例えば米国では、FAAで働く航空管制官は米国籍を持つことが求められる。
原題:The US Needs More Air Traffic Controllers. Is It Safe to Fly?(抜粋)
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