イランとイスラエルによる中東の主要エネルギー施設への攻撃の応酬が続いている。紛争が3週間近くに及ぶ中で、市場の混乱を抑えようとする米国の取り組みは複雑化している。

世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出プラントを擁する複合施設であるカタールのラスラファン工業地区は、イランの攻撃で「甚大な被害」を受けたと国営カタールエナジーが発表した。

カタール外務省はこの攻撃について「危険なエスカレーションであり、国家主権の露骨な侵害だ」と非難した。

同LNGプラントは、今月生産が停止される前には世界供給の約2割を担っていた。当局の18日遅くの発表によると、イランのミサイル4発が迎撃された後、1発が同施設に着弾した。その数時間後には、迎撃による落下物の影響で、アブダビはハブシャンのガス施設を停止した。

さらに19日早朝、ラスラファンへの追加攻撃により火災が発生し、カタール当局が対応に当たっている。カタールエナジーは、複数のLNG施設が被弾し、大規模な火災とさらに大きな被害が発生したと明らかにした。死傷者は報告されていない。

攻撃を受け、北海ブレント先物は続伸し、19日に一時5.1%上昇した。

バーンスタインのリサーチ部門マネジングディレクター、ニール・ベヴァレッジ氏は「LNGプラントに損傷が出れば、LNGの在庫や備蓄が限られていることを踏まえると、その影響は明らかに一段と深刻になる」と述べ、「LNGには戦略備蓄が存在しない」と指摘した。

トランプ米大統領はSNSへの投稿で、サウスパース天然ガス田への攻撃について、米国は「今回の攻撃について何も把握しておらず、カタールはいかなる形でも関与しておらず、事前に知ることもなかった」と説明した。

その上で、「極めて重要かつ価値の高いサウスパース天然ガス田に関して、イスラエルによるこれ以上の攻撃は行われない。ただし、イランが軽率にもカタールを攻撃した場合は別だ。その場合、米国はイスラエルの支援や同意の有無にかかわらず、イランがこれまで見たこともない規模と威力で同ガス田全体を壊滅させる」と警告した。

数時間前にイランは、ペルシャ湾周辺諸国に対し、複数のエネルギー施設が今や「正当な攻撃対象」になったと警告していた。イラン準国営のタスニム通信は18日、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)にある施設が、ミサイル攻撃の対象となり得る施設の一覧に含まれていると報じた。

イランは、同国の巨大ガス田であるサウスパース天然ガス田がイスラエルの攻撃を受けたことへの報復措置としている。

事態の悪化で、原油価格高騰に歯止めをかける米国の取り組みはさらに複雑化した。トランプ氏は、米国内でのエネルギー輸送コストを引き下げるため、100年の歴史を持つ港湾間輸送の規制を一時停止した。事情に詳しい関係者によると、バンス副大統領とトランプ政権の主要な高官は19日、石油企業幹部と協議する予定だ。

トランプ氏は、同盟国がホルムズ海峡の安全確保に消極的だと繰り返し不満を示してきたが、18日には、米国以外の国々が同海峡の責任を担うべきだとSNSに投稿。「米国の同盟国は状況をしっかり認識し、ホルムズ海峡の開放に向けて行動すべきだ」と語った。

イランのペゼシュキアン大統領はSNSへの投稿で、自国のエネルギーインフラへの攻撃は米国やイスラエル、その支持国にとって「何の成果ももたらさない」と主張。「状況は一層複雑化し、制御不能な結果を招く可能性があり、その影響は世界全体に及び得る」と警告した。

慎重を期する情報であることを理由に匿名で取材に応じたイスラエル高官は、サウスパース天然ガス田への攻撃を実施したと認めた。同ガス田はペルシャ湾に位置し、イランとカタールが共同で保有している。

カタール外務省の報道官はX(旧ツイッター)への投稿で、同ガス田への攻撃は「危険で無責任な行為だ」と非難した。

事情に詳しい関係者によると、米国は作戦を把握していたが関与はしていない。イラクは、イランがガス供給を停止した結果、発電能力の低下を報告した。19日間に及ぶ紛争に中東の他国が巻き込まれている新たな例となった。

UAEのムハンマド大統領の側近は、同国がホルムズ海峡の安全確保にUAEが協力する可能性を示唆した。

イスラエル国防軍によると、イスラエル軍機は初めてイラン北部の標的を空爆した。

原油先物は18日の取引で再び上昇。ICEフューチャーズ・ヨーロッパのデータによると、北海ブレント原油は3.8%高の1バレル=107.38ドルで引けた。

米国産原油も一時1バレル=100ドル近くまで上昇した後、96ドル前後で取引を終えた。米国の緊急備蓄からの供給が近く市場に出る見通しで、国際指標であるブレントと比べ米国内の価格上昇は比較的抑えられている。ただ、時間外取引ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の中心限月は時間外取引で一時3.4%高の98.69ドルを付けた。

ラスラファンとサウスパースへの攻撃は、中東におけるエネルギー事業が戦時下で抱える脆弱(ぜいじゃく)性に改めて浮き彫りにした。

ドイツ国際安全保障問題研究所の客員研究員ハミドレザ・アジジ氏は、今回の攻撃はイランの経済インフラを弱体化させ、戦闘継続能力を抑える方向へ戦争の様相が変化していることを示していると指摘。「サウスパースはイランのガス供給の中核であり、ひいては発電や産業活動にも直結している。たとえ限定的または一時的な混乱であっても、電力不足や産業の減速、さらには経済全体への負担につながり得る」と述べた。

高市早苗首相は18日から、就任後初めて米国を訪問する。首脳会談で経済安全保障などの連携強化を目指すが、ホルムズ海峡を巡る同盟国の対応に不満を示すトランプ大統領の出方は不透明で、首相は対応に苦慮しそうだ。

報復の応酬

イランは18日、UAEやサウジ、クウェートに対して新たなミサイルおよびドローン攻撃を展開した。また、イスラエルのテルアビブも攻撃し、2人が死亡した。これらの攻撃の前には、イランがイスラエルの攻撃により同最高安全保障委員会(SNSC)のラリジャニ事務局長が殺害されたことを認めた。

イラン軍部は、ラリジャニ氏だけでなく、民兵組織バシジのソレイマニ司令官の殺害に対する報復も誓った。イスラエルによると、両氏は同じ空爆で死亡した。

Photographer: Source: Getty Images Europe

イスラエルと米国はイランへの空爆を継続している。米国は17日遅くに、ホルムズ海峡近くのイランのミサイル拠点を貫通弾(バンカーバスター)で攻撃したと明らかにした。トランプ大統領は同海峡の再開に向けた取り組みを強めている。

一方、イランはホルムズ海峡を通じた自国産原油の輸送は戦争前とほぼ同じペースを維持し、地域の他国の輸送が滞る中で海峡の支配を最大限活用している。米国の攻撃を受けた主要輸出拠点カーグ島でも、原油の積み出しは続いているとみられる。

イランのアラグチ外相はカタールの衛星テレビ局アルジャジーラとのインタビューで、「戦後を見据え、ホルムズ海峡と船舶の通航の在り方について新たな枠組みを設計する必要がある」と発言。「そうすることで、イランおよび地域の利益に配慮しつつ明確な規則の下で、この水路の平和的な航行を恒久的に維持できるようにすべきだ」と述べた。

イランでの戦闘と並行して、イスラエルはレバノンでの攻勢を強めている。レバノン政府によると、イスラエルによる攻撃で900人超が死亡した。

戦闘による死者数は4000人を超え、その4分の3以上がイランに集中している。中東のその他の地域でも数十人が死亡し、米軍はこれまでに13人を失った。

原題:Iran, Israel Trade Strikes on Energy Facilities in Worsening War

、Qatar Reports Extensive Damage at World’s Largest LNG Plant (4)

、Trump Threatens to Attack South Pars Field if Qatar LNG Hit

Oil Jumps After Iran, Israel Target Middle East Energy Assets(抜粋)

(カタールエナジーの発表やトランプ大統領の発言を追加して更新します)

--取材協力:Fiona MacDonald.

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