世界最大の人口を抱える中国のハイテク業界では、カニやエビのclaw(はさみ)を冠したKimiClaw、AutoClaw、QClaw、MaxClawなどの人工知能(AI)エージェントが登場。「ロブスターを育てる」という表現が生まれるほどのブームとなっている。

自律型AIを作るオープンソースのAIエージェント「OpenClaw(オープンクロー)」は広く普及し、中国テック界にシリコンバレーをしのぐ熱狂を生んだ。これを基にスケジュール管理やメール仕分けなど、各種タスクを行うエージェントを作るプロセスは今や「ロブスター飼育」と呼ばれ、ネット上で広く使われている。企業はウィーチャットでの投稿をロブスターの絵文字「????」で始め、カスタム化参入のたやすさをアピールしている。

テンセント・ホールディングス(騰訊)やアリババといったハイテク巨人に加え、ムーンショット(月之暗面)、ミニマックス・グループ(稀宇科技)などもワンクリックでの簡易導入をうたう独自版を投入。深圳から無錫に至る政府機関も、OpenClaw活用企業に数百万元の補助金を提示している。

投資家はこの熱狂を見逃さない。テンセント株は10日の取引で約7%上昇、ミニマックスは時価総額で百度(バイドゥ)を上回った。用途やリスクが十分理解されないまま、熱気は高まっている。

筆者は先日、智譜の北京オフィスで開かれたイベントに参加した。若い起業家らにピザとザリガニ料理が振る舞われ、OpenClaw活用例としてAI専用ソーシャルねネットワークの「ClawdChat」などが紹介された。ある登壇者はエージェントの「minions」をモニターするため、MacBook Airを5台持ち歩いていると語った。ウィーチャット投稿の収益化を狙っているという。

深圳の集まりでは、ロブスターをかたどった真っ赤な帽子をかぶる参加者も現れ、1990年代の気功ブームに例える指摘もオンラインで見られた。

中国がこの現象で際立つ背景には、昨年のDeepSeek成功に続くAIの突破口探しがある。待望の後継製品が見つからない中で、OpenClawは業界が渇望するヒット作のように受け止められている。オープンソースという方針は、米国の最先端AI研究所による専有型サービスに対抗したい中国政府の政策とも合致する。

もちろん、長期の商業的な狙いもある。中国の主要クラウド事業者やモデル開発企業が目指しているのは、この熱狂を取り込み、自社プラットフォーム上での利用を拡大させることだ。米国のOpenClawユーザーは通常、予備のコンピューター(一般的にはMac Mini)を使ってコードを動かすが、多くの中国インターネット企業は現在、クラウド上で稼働可能な仮想マシンを提供している。中国国内のAI競争は極めて熾烈(しれつ)であり、ユーザー獲得のためならコストはいとわず、わずかな利益率を削るリスクさえ目をつむる姿勢だ。

この熱狂は、2020年後半の大規模な規制強化に見舞われる前、中国のテック産業が隆盛を極めた時代を想起させる。当時はベンチャーキャピタリストや起業家、チャンスに敏感な投資家が、自転車シェアリングの共有経済から、かつて熱気を集めた暗号トークン発行に至るまで、あらゆる新興分野に群がった。先手必勝か、「はさみ」を振るって挽回するか、いずれにせよハイリスクな闘いだ。

原題:China Is Even More Hyped About OpenClaw: Tech In Depth(抜粋)

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