(ブルームバーグ):戦時中の戦闘員は、数千年の歴史の中で、敵のインフラを機能不全に陥れるため、井戸に毒を入れ、橋を焼き払い、最近では鉄道や製油所、空港を攻撃してきた。現在中東で展開中の戦争では、データセンターという新たな標的がリストに加わった。
アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンでは、アマゾン・ドット・コムの施設3カ所がドローン攻撃により損傷した。非営利団体「ホリスティック・レジリエンス」の調査によると、イスラエルと米国は、テヘランで少なくとも2カ所のデータセンターを攻撃した。うち1つはイスラム革命防衛隊と関連していた。
防護型データセンターを建設するイスラエル企業NEDデータセンターのダニエル・エフラティ最高経営責任者(CEO)は、こうした施設への攻撃について「銀行や政府機関、主要産業を麻痺させる。1分間のダウンタイムでも、組織に数百万ドルの損失をもたらす可能性がある」と述べた。
イランがアマゾンの施設を狙っていたかは定かではないが、コンピューティング能力が戦略上の要件となっていることは明らかだ。データを保管し重要なデジタルサービスを提供するサーバーファームは、中立的な商業資産ではなく、国家権力の潜在的な拠点とみなされている。監視やドローン航法、映像・衛星データのリアルタイム分析において、防衛技術は人工知能(AI)とクラウドサービスへの依存度を高めてきた。例えば、ロシアは2022年にウクライナへの全面攻撃を開始して以来、IT(情報技術)インフラを繰り返し攻撃してきた。業界団体「湾岸データセンター協会」の創設者ヘンリー・サットン氏は「データセンターは当然の標的だ」と語る。

テック大手が集中
豊富で安価なエネルギーと不動産を活用するため、米国のテック大手は近年、ペルシャ湾岸地域に殺到している。事業の大半は現地のデータセンター企業との提携を通じて運営されているため、どの施設が米国企業と関連しているかは必ずしも明確になっていない。調査会社DCバイトによると、湾岸に面する6カ国で建設中または開発中の約230のデータセンターのうち、アマゾンが完全所有・運営するものはごく一部だ。そのうち3施設が攻撃を受けた。
こうした施設が、軍事作戦に使用されていたかは不明だ。ただ、アマゾンやグーグルはイスラエル政府と12億ドルの契約を結び、イスラエル国防軍を含む機関にクラウドサービスとAIを提供している。このため、DCバイトの創業者エド・ガルビン氏は、攻撃がアマゾンのセンターのみを標的としたのは偶然ではないとの見方を示した。
マイクロソフトやグーグルなどの米国企業は通常、現地事業者からデータセンター容量を借り受け、中東地域でクラウドサービスを提供している。一部企業は米軍と契約を結んでおり、これが提携先に望ましくない注目を招くリスクがある。
マイクロソフトとグーグルはコメントを控えた。アマゾンは、ドローン攻撃についてはコメントを拒否したが、戦争によるデータへの影響を防ぐため、顧客に対し「災害復旧計画の実施、他地域に保存されたリモートバックアップからの復旧、アプリケーションの更新」を推奨する声明を発表した。
戦時中に複数のデータセンターが同時に攻撃を受ける脅威により、企業は戦略の見直しを迫られている。データセンターのセキュリティ対策は通常、サイバー攻撃への防御や侵入者の阻止が中心で、ミサイルやドローンからの防御は想定外だ。また、単一のセンターが停止しても、準備の整った事業者はワークロードを他の施設に移行でき、中断は最小限に抑えられることがある。
少なくとも湾岸地域で、戦争が施設の保険料やセキュリティコストを押し上げる可能性があることも懸念材料だ。今回の戦争は、クラウドやAIサービスの地域拠点になるというサウジアラビアとUAEの野心を阻む恐れがある。英国の防衛シンクタンクRUSIのアナリスト、ノア・シルビア氏は「データセンターを隠すことはできない。だが防空システムを設置することはできる」と語った。
原題:Drone Strikes on Gulf Data Centers Expose AI Boom’s New Risks(抜粋)
--取材協力:Matt Day、Aaron Clark.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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