中国商務省は24日、三菱重工業やIHIなど20の日本企業や団体を対象としたデュアルユース(軍民両用)品目の輸出を禁止すると発表した。同国は1月に輸出管理リストを作成していたが、日本企業が追加されるのは初めてだ。日本政府は、強く抗議し措置の撤回を求めたと明らかにした。

中国政府は声明で、輸出禁止は国家安全保障と国益を保護し、国際的義務を履行するためとしている。禁止リストには川崎重工業や防衛大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども含まれる。発表を受け、24日の東京株式市場で三菱重工業株は一時前営業日比4.4%安とマイナスに転じた。IHI株は同7.7%安、川崎重工業株は同5.8%安に下げ幅を拡大した。

また同国政府は輸出禁止リストに加えて、スバルなど日本企業20社を監視リストに加え、デュアルユース品目の輸出に対する審査を強化するとした。中国商務省は24日、別の声明で「これらの措置の目的は、日本の『再軍事化』や核への野心を抑制することにある。これらの措置は完全に正当かつ合理的で合法だ」と主張した。

佐藤啓官房副長官は同日午後の記者会見で、「強く抗議するとともに措置の撤回を求めた」と明らかにした。外務省の金井正彰アジア大洋州局長が、施泳駐日中国大使館次席公使に対して申し入れした。佐藤氏によれば、今般の措置の内容や影響については精査を行い、必要な対応をとるという。

また経団連の筒井義信会長も定例記者会見で、中国の輸出管理強化は、「極めて遺憾であり撤回を求めたい」と述べた。

中国は日本への経済制裁を進めている。1月にはレアアース(希土類)などの輸出規制を厳格化する方針を示していた。シンガポールの南洋理工大学のディラン・ロー准教授は、高市早苗首相が率いる自民党が衆院選で圧勝したにも関わらず「明らかに圧力を緩めていない」と指摘。日本の再軍事化を制限すると同時に、企業に直接打撃を与える目的の行動だと指摘した。

影響は現時点で不透明だが、企業によって大きく異なりそうだ。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、20社が特定されたことで不確実性が低下した点では良い側面もあるが、リストの中には軍事産業や防衛関連と関係ない企業も入っているように見えると指摘。今後、対象については「中国側と対話していくことが必要になるだろう」とした。

政治的メッセージ

監視リストに名前があがっていた伊藤忠アビエーションではそもそも中国からの輸入はなく、中国企業との商談や進行中の案件もない。三井物産エアロスペースでも、取扱商品に中国から輸入しているものは現状ないという。おなじく監視リストに入った日東電工は現段階では調査中で、ENEOSホールディングスも事実確認を進め、必要に応じて適切な対応をとるとした。スバルも現時点では情報を精査中で、引き続き状況を注視するとしている。TDKも精査中とした。

IHIの広報担当者は、事実関係を確認中で、状況を注視すると述べた。富士通も事実関係も含めて確認中とした。禁止リストに傘下の2社が入ったNECは、状況は注視しつつ、事業への影響を精査していくとしている。2社は防衛省向けの通信システムやレーダーなどのハードウェアやソフトウェアの開発を担っている子会社という。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の伊藤嘉輝氏は、三菱重工業とIHIについて、防衛事業への依存度が高いことから、今回の輸出規制の影響が日本の重工業他社に比べて大きくなる可能性があると指摘。BIの試算では利益に占める防衛関連事業の割合は、三菱重工業と川崎重工業がいずれも20%超、IHIは約10%。日本の防衛セクターは足元では一定の在庫を確保しているが、長期的な調達の多様化は依然として進行途上にあるとの見方を示した。

地政学研究所の鈴木一人所長は、日本への政治的メッセージであり、日本企業への影響は限定的と分析する。最終用途証明書を提出していれば、防衛分野向けでない限り材料は入手可能だろうと述べた。

原題:China Targets Japan Defense Companies in Sweeping Export Ban(抜粋)

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--取材協力:稲島剛史、広川高史、望月崇、森田理恵、吉田昂、長谷部結衣、小田翔子.

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