米連邦最高裁が違法と判断した関税の還付について、トランプ政権が反対する主張を展開した場合、法的なハードルに直面する可能性が高い。司法省の弁護士によるこれまでの対応が影響する見通しだ。

最高裁は20日、トランプ大統領が1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に講じた関税措置を6対3で違法と判断した。多数意見では、争点の関税で1700億ドル(約26兆2870億円)超を支払った企業に還付が行われるかどうかには言及せず、この問題を下級審に差し戻すとした。

反対に回ったカバノー判事は少数意見で、還付手続きは「混乱を招く可能性が高い」と警告していた。

トランプ氏は最高裁判断を受け、政権として還付に反対する可能性を示唆。「恐らく今後2年間は訴訟で争われることになるだろう」と述べた。

ただ、還付を巡る法廷闘争は白紙の状態で進むわけではない。司法省は過去1年にわたり、米国際貿易裁判所で将来的な異議申し立ての余地を結果的に狭める立場を取ってきた。

同裁判所が昨年5月にIEEPAに基づく関税を違法と判断した後、トランプ政権は訴訟が続く間も当局が数カ月にわたり関税の徴収を継続できるようにする理由として、還付の仕組みが利用可能である点を挙げていた。

政府側の弁護士は昨年の裁判文書で、政権を相手取り提訴した原告については、最高裁で勝訴した場合、「利息を付して還付を確実に受け取ることになる」と記していた。司法省はその後の裁判では同様の断定的な表現を用いていないが、裁判所が政権に当時の約束の履行を求める可能性が高いと、通商分野の弁護士は指摘している。

米法律事務所ヴィンソン・アンド・エルキンスのパートナー、ジョイス・アデトゥトゥ氏は「政府には金銭的負債を減らすためにあらゆる主張を行う動機があるが、実際の原告には還付し、これまで支払いを行ってきた他の輸入業者には還付しないという扱いを正当化するのは難しいだろう」との見方を示した。

トランプ氏は政権の還付戦略について詳細を明らかにしておらず、司法省も今後の対応方針の詳細を裁判所でまだ示していない。最高裁は通常、判断公表から32日が経過するまで正式な差し戻しを行わない。この待機期間は、敗訴側が判断の再考を求める機会を確保することが目的の一つだが、最高裁が判断を覆すことはほとんどない。

司法省報道官はコメントを控え、ホワイトハウス報道官もコメント要請に応じなかった。

ブルームバーグ・ニュースの分析では、これまでに1500件超の関税還付訴訟が係属中で、その大半は最高裁が昨年11月に口頭弁論を開いた後に提起された。もっとも、還付を求める可能性がある企業の総数から見れば一部に過ぎない。米政府によれば、2025年末までに争点の関税を支払った輸入業者は30万社余りに上る。

司法省は関税訴訟で、還付に反対する主張を展開する余地を狭めてきた。提出文書では、通関手続き上の重要な期限が過ぎた後でも、国際貿易裁判所が当局に関税の再計算と差額の返金を命じる権限を持つことに異議を唱えないとしている。

国際貿易裁判所判事は昨年12月の判断で、政権に対し自らの主張に沿った対応を求める姿勢を明確にした。最高裁の判断が出るまで通関手続きを停止するよう求めた企業側の申し立てを退け、政府の保証がある以上、裁判所が介入する必要はないと説明した。

具体的には、関税負担が確定した場合でも輸入業者は還付を受けられると政府が主張して裁判所を「納得させた」以上、その後に「相反する立場」を取ることはできないと、国際貿易裁判所判事は指摘。「禁反言(judicial estoppel)と呼ばれる司法上の法理により、政府が矛盾した対応を取ることは妨げられるとしている。

もっとも、通商分野の弁護士は、還付を巡る争いの可能性を政府が完全に排除したわけではないと警告している。

司法省は過去数カ月、最高裁で敗訴した場合でも、還付請求に関する「個別の訴えに異議を唱える権利を留保する」と国際貿易裁判所で表明してきた。米法律事務所ホゲット・ニューマン・リーガル・アンド・ケニーのパートナー、シッダールタ・ラオ氏は、政府が還付の適格性を限定するよう主張したり、「迷路のように複雑」で時間を要する請求手続きを求めたりする可能性があると指摘した。

ラオ氏は「それは今すぐ資金を必要とする輸入業者にとっては事実上の拒否と同じように機能する」と説明した。

司法省はまた、関税の再計算を命じる国際貿易裁判所の権限を支持するに当たり、政府に還付義務があるとの「最終的かつ不服申し立てのできない判断」が存在することを条件としている。一部の通商弁護士はこの文言に着目している。

関税還付の訴訟を手がけるグランフェルド・デシデリオ・レボウィッツ・シルバーマン・アンド・クレスタットのパートナー、エリック・スミスワイス氏は、最高裁が違法に徴収されたと判断した資金の還付に政府が反対する法的根拠が何であるのかは分からないと話す。

一方で、「最終的かつ不服申し立てのできない」との文言が盛り込まれたことで、司法省があらゆる選択肢を検討する余地が生じたとの見方を示した。

スミスワイス氏は、トランプ政権が還付手続きに同意することについて「慎重ながら楽観的」としつつも、トランプ氏が訴訟が続くとの見通しを示したことには懸念を抱いていると語った。

原題:Trump Faces Tough Legal Landscape to Oppose Tariff Refunds(抜粋)

--取材協力:Greg Stohr.

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