元財務官の中尾武彦氏は16日、日本銀行は政策対応が後手に回っているとし、着実な利上げがインフレ対策となり、過度な円安の抑制や長期金利の安定をもたらすとの見解を示した。

中尾氏はブルームバーグとのインタビューで、国際通貨基金(IMF)が試算する購買力平価の1ドル=90円台に比べて、「円は極端に安い」と指摘。「日銀が政策金利を着実に引き上げていくことで、インフレへの対応、行き過ぎた円安の抑制に加え、長期金利の安定につながる」と語った。

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日本の財政が拡張的なのに日銀の金利引き上げが遅いのは、「インフレ率に対して明らかにビハインド・ザ・カーブだと言える」とも述べた。円安は国内の物価上昇につながる一方で、不動産や企業などを外国人に安く買われてしまうので、「日本にとって国益ではない」とした。

日銀は昨年12月に政策金利を30年ぶりの高水準に引き上げた。1月会合では、利上げ後も円安傾向が続いていることなどを踏まえ、複数の政策委員が金融政策の対応が遅れるリスクに言及した。日銀は経済・物価が見通し通り推移すれば利上げを継続する方針だが、中尾氏の発言は利上げペースを早める必要性を強調した格好だ。

中尾氏は、米国と日本の「金融政策のスタンスの違いが大き過ぎて、円が過度に弱くなっている」との見方を示した。米連邦準備制度理事会(FRB)は、コロナ禍後にビハインド・ザ・カーブと批判されつつも、2022年から23年まで着実に利上げを行い、5.5%の水準まで引き上げたが、日銀は0.75%までしか引き上げていないとした。

高市早苗首相は衆院選後の9日、食料品にかかる消費税率を2年間に限定してゼロとする減税の実現に改めて意欲を示した。財源として赤字国債の発行は行わない方針も強調した。

消費減税に伴う税収減は年間5兆円と推計され、財源確保は容易ではない。中長期的な財政の健全性への懸念を背景に、債券市場では先月20日、30年物国債利回りが過去最高の3.88%に達した。

為替介入

円は対ドルで先月14日に一時159円45銭と節目とされる160円に迫った。その後は、片山さつき財務相や三村淳財務官による相次ぐ円安けん制発言やレートチェック報道を受けて介入警戒感が広がり、足元では153円付近で推移している。

円相場は1月下旬に3度にわたって急騰する場面があった。財務省のデータでは、25年12月29日から1カ月間に円買い介入はなかったことが示されたが、日米通貨当局が参考となる為替レートの提示を求めるレートチェックを実施したとの観測が浮上していた。

中尾氏は、日米政府が円安は好ましくないと思っていることを示したと指摘。その上で、米国側は急激な円安進行時には日本政府が必要に応じて介入することを認める一方で、日米の協調介入に関しては「ハードルが高い」との認識を示した。

中尾氏は財務官在職中(11年8月-13年3月)の11年8月から11月にかけて、総額約13.6兆円に上る円売り・ドル買い介入を指揮した。東日本大震災後の同年10月に、円相場が1ドル=75円35銭と戦後最高値を付けた局面だった。財務官退官後はアジア開発銀行(ADB)総裁も務めた。

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