衆院選後1週間の日本市場は株式、債券、円が全て買われる「トリプル高」となった。事前の予想をはるかにしのぐ形で高市早苗首相率いる自民党が圧勝し、投資家は政治の安定化だけではなく、経済の強化にもつながると期待している。

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

日本株全体の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は、8日の衆院選を受けた2月第2週に3.2%上昇した。円建てで見たS&P500種指数を7ポイント以上上回っていることは特筆に値し、パフォーマンス格差は2020年3月以来の大きさだ。

過去にも小泉政権や第2次安倍政権など衆院選の大勝をきっかけに構造改革への期待が高まり、海外投資家の日本株買いが強まったケースがあったため、今回も大規模な資金流入につながるとの見方が一部で浮上している。

米ゴールドマン・サックス・グループは13日、日本株の投資判断を従来の「マーケットウエート」から「オーバーウエート」に引き上げた。ストラテジストのティモシー・モー氏は、企業業績見通しの改善が続いている上、日本の選挙結果はより高いバリュエーションを正当化すると予測している。

高市政権が有権者から自民党結党以降で最大の信認を得たことで、政策推進力が大きく増したとみられる半面、足元の市場の反応は期待先行、反射的な側面を含んだ点には留意が必要だ。実際、衆院選後の1週間で上昇が目立った業種の一つは不動産で、構造改革による経済成長期待というより拡張的な財政政策を受けた資産インフレ進行の読みがあると言えなくもない。

債券・円反発の驚き

衆院選前は与野党双方が食料品にかかる消費税率の引き下げを公約に掲げたことで、財政の拡張が国債増発につながるとの警戒から下落していた債券も反発(金利は低下)。10年国債利回りは衆院選直前の6日と比べ横ばいで終えたが、財政政策の影響を受けやすく、1月下旬には4%を超えていた30年債利回りは一時3.395%まで急低下する場面があった。

債券が見直されているのは高市首相の圧勝で財政支出がむしろ抑制され、市場にも配慮することが可能になったとの見方が広がっているためだ。首相は食料品の消費減税について、超党派の国民会議で夏前には中間取りまとめを行う考え。しかし、年間5兆円程度の財源を赤字国債の発行なしにできるかどうか懐疑論も根強く、財政悪化への懸念が再燃するリスクはくすぶっている。

衆院選後の円の反応も市場関係者を驚かせた。財政リスクを念頭に円安進行が予測されていたが、ふたを開ければ円は対ドルで2.4%上昇し、主要10通貨(G10)の中で週間パフォーマンスはトップだった。債券と同様、過度な財政悪化懸念の後退があり、元財務官の山崎達雄氏はブルームバーグのインタビューで、円債が落ち着いてくれば円も買い戻されるとの見方を示した。

需給面も円の反発を促している。財政拡張による円安進行を読んでいたヘッジファンド勢は、米国の雇用統計が予想外に好調だったというドル買い要因があった中でも円の買い戻しを急ぐ姿勢を維持している。こうした動きに合わせ、相対的に低い金利の円を売り、高金利のドルを買う円キャリー取引が巻き戻されるとの懸念も広がりつつある。

今後の焦点は、政策の具現化と財源問題の決着だ。株式市場では高市政権が定める17の戦略投資分野に対する期待値は高いものの、市場の反応はまちまち。高市首相の就任以降、三菱重工業や川崎重工業など防衛関連株はTOPIXをアウトパフォームするが、コンテンツ株は低迷している。

いったん落ち着きを取り戻した債券市場も日本銀行が買い入れを縮小させているほか、生命保険会社など国内機関投資家も慎重な投資姿勢を維持しており、財政拡張などマイナス材料には脆弱だ。

ステート・ストリート銀行金融市場部の貝田和重部長は、円金利はいったんは落ち着きを取り戻しているものの、政権がやろうとしているのが財政拡張であることに変わりはないと指摘。ピクテ・ジャパンの大槻奈那シニア・フェローも、足元は不確実性を織り込んだ選挙前の揺り戻しが入っているに過ぎず、政策が出てきたわけでもないため、「今は凪の状態」だと言う。

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