ロシアの防衛産業は今年、急減速する見通しだ。政府当局者からは、ウクライナでの戦争関連で支出を拡大させるよりも、経済の安定と財政均衡を優先する方針が示唆されている。

ロシア経済省が発表した向こう3年間の予測によると、軍装備や部品、ドローン(無人機)、弾薬など政府の防衛調達に関連する業界の成長率は、今年はわずか4-5%にとどまる。ここ数年続けていた約30%の伸びから、大きく低下する。

防衛関連の急拡大は巨額の政府支出、24時間体制の操業、民間部門からの労働力吸い上げなどが後押ししてきたが、ウクライナへの侵攻開始から丸4年が経とうとしている今では、息切れが見られている。米国が主導する和平交渉でプーチン大統領はウクライナに最大限を要求する姿勢を崩していないが、防衛関連の急減速はロシア経済に広がるひずみに政府が対応しようとしていることを浮き彫りにする。

政府支出の中で国防は依然として最大の比率を占めてはいるが、主要項目のうち予算が唯一縮小する。一方で、全体の歳出はインフレに沿って増加する見込み。昨年30%余りの増加を記録した戦争関連支出は、今年は約11%減少する見通しだ。

政府高官は、政策優先順位の転換を示唆している。勝利に向けて財政政策を活用すると2年前に述べていたシルアノフ財務相は、原油安や制裁に耐えうる均衡予算の実現を政府の目標に据え直した。

マントゥロフ第1副首相は今月の会合でプーチン大統領に対し、防衛関連の生産で民間による製品の比率が昨年30%を超えたと報告し、軍需企業による民生プロジェクトの数を政府はさらに増やす計画だと説明した。

 

「経済省の予測は、事態を極めて明快に説明している。今年は財政縮小に向かうということだ」と、オックスフォード・エコノミクスの主任エコノミスト、タチアナ・オルロワ氏は述べた。

歳入が落ち込む中で軍事支出をさらに増やせば、他の支出を削るか、債務を増やすかしかない。インフレ圧力を強める要因にもなる。金利の高止まりは一段と長期化し、民間部門への負担はいっそう重くなる公算が大きい。

財政目標はマクロ経済の予測に基づいており、年内に見直される可能性もある。とはいえ、経済の安定か戦闘能力の増強か、どちらか一つを犠牲にせざるを得ないロシア政府の状況が浮かび上がる。

米カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドル・ガブーエフ所長は「今年を通じて、ロシアは岐路に立ち続けることになるだろう。戦争に資源を注ぎ込み続けるのか、準戦時体制へと段階的に戦争への注力を縮小していくのかの分かれ道だ」との見解を示した。

 

ロシアは原油安に加え、制裁強化による同国産原油のディスカウント拡大、輸送上の障害などで、歳入面での制約が強まりつつある。ルーブル高もこの圧力に拍車をかけている。

同時に、政府系ファンドの流動資産は、金融安定の維持に必要な最低水準付近まで使い尽くされた様子で、政府は財政赤字をすべて新規の国債発行で賄わざるを得ない状況にある。

ロシア科学アカデミー経済予測研究所のアレクサンドル・シロフ所長は「政府支出は、現在のロシア経済の状態にとって限界に近い水準に達したと考えられる」と述べた。

月次データによれば、ロシアの防衛産業はすでに減速している。軍装備品の部品を含む光学・電子産業の生産は、2024年の28%増から25年には11%増に鈍化したと経済省は見積もっている。戦車やその他の戦闘車両を含む輸送関連品目の生産も34%増から27%増に、爆弾や武器を含む金属製品の生産は32%増から14%増へと、それぞれ低下した。

ロシア経済の構造的な問題も、防衛産業が拡大を続けるためのコストを押し上げている。

防衛産業は過去3年間に積極的に人員を拡大し、約80万人の労働者を吸収したが、これによって国内の労働力不足を深刻化させ、民間部門との間で賃金競争が激化した。急速な賃金上昇でインフレが高騰し、政策当局は過去最高の金利を数カ月にわたり維持することを強いられた。その後、ようやく段階的な利下げに転じている。

原題:Kremlin’s War Machine Set to Hit the Brakes Under Tighter Budget(抜粋)

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