グリーンランドを領有すると脅すトランプ米大統領の行動がインド太平洋で中国を抑止する取り組みを損なうかどうかを巡り、ハワイで今週開かれた安全保障フォーラムで議論が交わされた。

「ホノルル防衛フォーラム」に参加した現職および元米政府・軍当局者の多くが、西半球での中国の影響力に対抗するため、トランプ政権が講じているベネズエラ攻撃を含めた措置が、中国のグローバルな影響力を弱め、米国がアジアの同盟国と共に戦力を投射する助けになると主張した。

第1次トランプ政権でホワイトハウス国家安全保障会議の首席補佐官を務めたアレクサンダー・グレイ氏は「ベネズエラとグリーンランド。全体を貫くテーマは何か。中国のアクセスを遮断し、中国の有害な影響力を断つことだ」と述べた。

一方、政府や軍の関係者に加え、防衛産業の幹部らも集うこの年次フォーラムの会場では、グリーンランド領有を巡って同盟国であるデンマークに挑むトランプ氏の姿勢に、多くの参加者が不安を示した。

朝鮮戦争以来の米国の同盟国である韓国の退役陸軍中将、全仁釩氏は、米国を常に善の力だと考えてきたと述べた上で、「今や、国民に対して、われわれには2つの悪があると伝えなければならない状況にある」と説明。「そして、より小さな悪を選ばねばならない」と語った。

米国の多くの同盟国が、国際法への懸念を脇に置きつつ、ベネズエラのマドゥロ大統領拘束を黙認してきた一方で、グリーンランドを巡るトランプ氏の威嚇は、北大西洋条約機構(NATO)の将来に疑問を投げかけている。

今回のフォーラム参加者は、ミサイル防衛や人工知能(AI)、防衛産業基盤の強化などを通じて、インド太平洋地域における中国の軍備増強に対抗する方法を議論した。

ただ、4月に予定されているトランプ氏訪中時の中国共産党の習近平総書記(国家主席)との会談を前に米当局者の多くは中国への直接的な批判を避けた。

こうした慎重姿勢は、台湾有事の可能性に触れた高市早苗首相に反発する中国から経済的・軍事的圧力を受ける日本へのトランプ氏の公的な支持が限定的であることや、昨年末に中国が台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した後の台湾政府に対する対応にも表れている。

バイデン前政権で国防総省インド太平洋安全保障担当次官補を務めたイーライ・ラトナー氏によれば、中国の怒りを買うことへの警戒は、トランプ政権がインド太平洋地域におけるより広範な戦略的競争に関心を持っていなかったことを示しているという。

「インド太平洋で合格点を取っていないのに、中国への挑戦を優先しているとは言えない」とラトナー氏は述べた。

北京での軍事バレード(2025年9月)

米軍当局者はこうした意見に反論。フォーラムではアジアにおける米国の同盟ネットワークへの幅広い支持が示された。

グリーンランドに関するトランプ氏の脅しが同盟に与える影響について問われた米インド太平洋軍のパパロ司令官は、「同盟とパートナーシップについては、われわれ全員が細心の注意を払うことになると思う。共に前進していく」と語った。

多くの議論は、中国が将来的に台湾を掌握しようとする野心や、人民解放軍を2027年までに世界水準の軍にすると習氏が定めた目標に焦点を当てた。この期限は、中国当局が侵攻の時期設定を否定しているにもかかわらず、武力行使の意思を反映しているとして多くの米軍関係者が注目している。

台湾が地域で差し迫った軍事的課題であることは、ブランソン在韓米軍司令官の発言でも浮き彫りになった。ブランソン氏は、必要であれば在韓米軍は台湾を巡るいかなる紛争でも役割を果たす用意があると述べた。

トランプ政権の新たな国家安全保障戦略(NSS)で西半球が強調されたことで、米国がより孤立主義的になっているのではないかとの疑問も浮上した。

しかし、現職および元米政府当局者によると、このアプローチは中国がもたらすより大きな戦略的課題に対処するものだという。西半球での「勢力圏」を復活させ、中国のアジア支配を容認するようなものでは決してないとの見立てだ。

フォーラム参加者の一部は、「アブソリュート・リゾルブ」と呼ばれる複雑なベネズエラ軍事作戦でマドゥロ氏を排除したことや、昨年のイラン核施設攻撃が、中国による潜在的な侵略を抑止する助けになった可能性もあると分析。

米国は「極めて長距離にわたり戦力を投射し、しかも血と財産という観点で米国側のコストを比較的最小限に抑えた形でそれを実行する並外れた能力を示してきた」と米スコウクロフト戦略安全保障センターでインド太平洋安全保障イニシアチブのディレクターを務めるマーカス・ガルラウスカス氏は語った。

一方、元米国防総省幹部でオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)で防衛戦略担当副ディレクターを務めているコートニー・スチュワート氏は、「グリーンランドに関するデンマークの主権と主張に挑戦することで北大西洋でルールに基づく秩序を維持できないのであれば、インド太平洋でルールに基づく秩序を米国がどう支えるのかを理解するのは非常に難しい」と述べた。

「米国は常に、道義的に高い立場にある善人のように見られてきた」とスチュワート氏。その上で、トランプ政権は「それが自分たちにとって報われていないと考え、もう少し敬意を得る必要があり、実際にはもっと力を誇示できるのだと思っているのかもしれない」との見方を示した。

マドゥロ氏、ニューヨークの連邦裁判所への出廷前にウォール街のヘリポートに到着(1月5日)

原題:US Faces Skepticism Over Deterring China as Trump Eyes Greenland(抜粋)

(最終段落と見出しを更新しました)

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