(ブルームバーグ):トランプ米大統領が導入した関税の大半の行方は、米連邦最高裁の判断に委ねられている。最高裁は包括的な関税措置の合法性について、9日にも判断を下す可能性がある。下級審の米国際貿易裁判所と連邦特別行政高裁は2025年、これらの関税措置は違法との判断を示したが、係争が決着するまでの間は政権による関税措置自体の執行を認めてきた。
最高裁の昨年11月5日の口頭弁論では、非常事態に際して大統領に特別な権限を付与する1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、一方的に関税を課す権限がトランプ氏にあるのかについて、大半の判事は懐疑的な見解を示した。最高裁は判断の日を事前に明らかにしないが、審理済みの案件に関する今年最初の意見公表日を9日に設定し、関税訴訟で判断を示す可能性がある。
関税を巡ってトランプ氏に不利な判断が下されれば、同氏の看板の経済政策は打撃を受け、ホワイトハウス返り咲き後で最大の法的敗北となる。また、これまで米国の輸入業者が支払った多額の関税の返還を巡り、複雑な法廷闘争が生じる可能性が高まる。既に1000超の企業が訴訟に名を連ねている。
どの関税が危機にさらされているのか?
問題となっているのは、トランプ氏が「解放の日」と呼んだ25年4月2日に発表した日本を含む広範な貿易相手国・地域に対する関税や、合成麻薬フェンタニルの米国流入に関連した中国およびカナダ、メキシコに対する関税だ。
下級審は、トランプ氏がIEEPAを根拠に導入したこれらの関税を違法と判断している。
一方、別の法的根拠に基づいて課された特定品目の関税は、最高裁の審理対象に含まれていない。
例えば、トランプ政権は1962年通商拡大法232条を適用し、鉄鋼やアルミニウム、自動車、銅製品、木材に関税を課してきた。
これらは、当該製品の輸入が国家安全保障上のリスクになると結論づけた商務省の調査に基づくものだ。
米大統領にはどのような関税賦課の権限があるか?
米国憲法第1条は課税や関税を課す権限、「外国との通商を規制する」権限を議会に与えている。ただ、議会は数十年にわたり、さまざまな立法を通じて通商権限の一部を大統領に委ねてきた。その大半は、大統領が関税を発動できる理由を限定している。
トランプ氏は政権1期目にもそうした権限の限界を試したが、今回はIEEPAの下で、事実上無制限の権限があると主張し、大統領令によって関税を課した。同法は、これまでこの目的で使われたことはなく、条文にも関税への言及はない。
IEEPAは特定の非常事態に大統領に幅広い金融取引への権限を与えるものの、通常用いられる手段は制裁だ。トランプ氏は、他国との貿易赤字や米国境での薬物密輸を国家非常事態として挙げ、同法を根拠に関税を発動することができると主張している
下級審の判断は?
国際貿易裁判所は昨年5月、憲法が「関税を課す権限を議会に明示的に割り当てている」ことを理由に、IEEPAは「大統領に無制限の関税権限を委任するものではない」と結論づけた。
国際貿易裁判所では、世界的な関税を発表したトランプ氏の最初の大統領令と、報復措置を取った国からの輸入品に追加関税を課したその後の大統領令について、いずれもIEEPAで大統領に与えられた権限を逸脱していると判断した。
またメキシコ、カナダ、中国からの輸入品を対象とした別の一連の大統領令についても、賦課を正当化する根拠とされた米国へのフェンタニル流入の非常事態に関税が直接対応していないとして違法とされた。
国際貿易裁判所判事は、大統領が関税を交渉手段として用いることの「賢明さや、効果が見込めるかどうか」を判断しているわけではないと明確にした。その上で、トランプ氏による関税発動が「賢明でない、あるいは効果がない」ため許されないのではなく、連邦法が「それを認めていないから許されない」と論じた。この判断は連邦特別行政高裁も支持した。
別の訴訟では、首都ワシントンの連邦地裁判事が、中国やその他の国との通商に関連するトランプ氏の関税の一部を違法と判断した。コントレラス判事は、判断の適用範囲について、訴えを起こした家族経営の玩具製造会社2社に限定した。
IEEPA根拠の関税に違法判断の場合、米政権の関税政策への影響は?
違法の判断が下された場合、トランプ政権はIEEPAに基づく関税を今後徴収できなくなるだけでなく、既に支払われた分の返還を求められる可能性にも直面する。
トランプ関税の根拠の大部分が崩れる事態になれば、米国の財政状況を巡る懸念も一段と強まりかねない。特に債券市場の投資家は、膨らみ続ける連邦債務残高の行方に疑問を呈してきた。政権は昨年7月4日にトランプ氏が署名して成立した税制・歳出法による減税の穴埋めとして、関税収入の増加を挙げていた。
もっとも、IEEPAに基づく関税を失うことが、世界貿易の再構築を目指すトランプ氏の取り組みに恒久的な打撃になるとは限らない。トランプ氏には、国家安全保障上の理由から輸入品に関税を課し、輸入を規制する権限を大統領に与える通商拡大法232条など、他にも関税を課す手段がある。ただ、それらはIEEPAの場合よりも権限は限定的だ。
同様に広範な措置を講じるには、1974年通商法122条の規定を用い、最長150日間にわたり、最大15%の関税を一時的に導入することが考えられる。だが、これは米国の国際収支が「大規模かつ深刻」な危機に直面している場合に限り、国際収支の不均衡を是正するためか、ドルの「差し迫った重大な」下落を防ぐ目的で、大統領が単独で発動できるものだ。
また政権は、1974年通商法301条に基づき、各国の不公正な通商・経済政策について、さらなる調査を開始することも可能だが、実施までには一段と多くの時間を要する。
9日に最高裁判断が下されなければ、いつになりそうか?
最高裁判事は4週間の休廷期間を終え、9日に審理を再開する。今後数週間のうちに追加の意見公表日が設定される可能性はあるが、その日程は裁判所の外部には明らかにされていない。
原題:Trump’s Tariffs Face Supreme Court Test. What to Know: QuickTake(抜粋)
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