(ブルームバーグ):ベネズエラに向かっていた制裁対象の原油タンカーが米沿岸警備隊の追跡を受け、進路を変えて大西洋へ退いた。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。トランプ政権はベネズエラ政権への圧力を強める封鎖を続けている。
関係者によると、米沿岸警備隊は21日、悪天候の中、バルバドス近海でタンカー「ベラ1」と遭遇。安全な乗船検査を実施するため、より穏やかな海域へ移動するよう指示した。
だがベラ1は大西洋に向かったという。関係者の1人によれば、米当局は同タンカーが戻らないとみている。別の関係者によると、ベラ1は進路を変えた時点で原油を運搬していなかった。
米政府高官によると、沿岸警備隊は同タンカーの追跡を断念していない。司法当局の差し押さえ命令が出ているという。
監視の厳しいベネズエラ周辺海域を離れるというタンカー乗組員の判断は、トランプ大統領が命じた米国の封鎖が、同国の原油輸出をいかに混乱させているかを示している。ベネズエラの原油輸出の大半は通常、中国向けだ。
今回の取り組みは数十年で最大規模となる同地域への米軍配備の一環だ。こうした措置は、麻薬カルテルの阻止とベネズエラ政府への圧力を目的にトランプ政権が命じた。
トランプ政権は先週末、ベネズエラを出入りするタンカーに対する封鎖を強化し、マドゥロ大統領に対し引き続き幅広い圧力をかけた。20日には米当局が、制裁対象ではないが香港拠点の事業体が所有する「センチュリーズ」に乗船検査を行う一方、ベラ1を追跡していた。別の超大型原油タンカー「スキッパー」は10日に拿捕(だほ)された。
原油の大半を輸出できない状況にあるベネズエラでは、貯蔵タンクや稼働していないタンカーが急速に埋まりつつあり、近く石油生産の停止を余儀なくされる可能性が高まっている。
原題:US Chased Oil Tanker Away From Venezuela as Blockade Continues(抜粋)
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