(ブルームバーグ):常にアートに囲まれて育ってきたというロザリン・マシューズさん(33)は昨年、メキシコシティーのギャラリーを訪れた際、アーティスト、フロリア・ゴンザレス氏の絵画を初めて目にした。
同じギャラリーが今年再びゴンザレス氏の作品を展示すると、マシューズさんは緑を基調とした「It’s not Sunday, but it’s Gloomy 2024(日曜日ではない、憂鬱(ゆううつ)な2024年だ)」と題された作品をほぼ即決で購入した。
マシューズさんは「デジタルカタログを見て、すっかり心を奪われた」と話したが、購入価格は明らかにしなかった。
25年版「アート・バーゼル&UBSグローバルコレクティング調査」によると、マシューズさんのような若い女性コレクターは、アート市場での影響力をこれまでになく強めている。
10の主要市場で富裕層コレクター3100人を調査したこの調査リポートは、X世代とベビーブーマー世代では男性が年齢層内で女性より多くを支出していた一方、Z世代とミレニアル世代では女性が男性を上回る支出をしたことを示している。
リポートによると、ミレニアル世代の女性が24年にファインアートや装飾美術、アンティークに平均64万3700ドル(約1億円)を費やしたのに対し、同世代の男性は平均39万5530ドルだった。
Z世代では差はさらに大きく、女性は平均53万7400ドル、男性は19万3810ドルだ。
こうした若い女性は、収集における優先順位も異なる。女性は男性に比べて無名のアーティストの作品を多く購入し、女性作家の作品により多く支出し、所有点数も多かったという。女性コレクターのコレクションに占める女性作家の作品は平均49%で、男性の40%を上回った。
男性作家との差
アートフェアやインスタグラムなどでも作家を見つけるというマシューズさんは、テキサス州サンアントニオに本社を置くルシファー・ライティングの幹部だ。
同社を創業したのは父で、両親は2人とも長年のコレクターだという。娘のマシューズさん自身も、サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートで修士号を取得している。
マシューズさんは、自らも女性の友人たちも作品購入に関心を持つようになってきたと明らかにしながら、「数年前はそうではなかった。変化が起きている」と指摘した。
調査リポートは、今後数十年で世界的にベビーブーマー世代から配偶者や若い相続人へ移転すると推計される資産約83兆ドルの多くが女性に渡るため、こうした購買傾向は加速する可能性が高いとしている。
ただし、これはコレクターに関する数ある報告書の1つに過ぎず、若い女性の支出増加を初めて示したものでもある。調査結果を裏付けるには、さらなるリサーチが必要だ。
美術館やビエンナーレ、大手民間ギャラリーはここ数年、女性作家の展示拡充に力を入れてきた。
ただ、実際にはアート市場における女性作家の存在感や作品の評価額は、依然として男性作家に後れを取っている。若い女性の購買力と収集は、その状況を変える助けになるのだろうか。
アート・バーゼル&UBSの調査によれば、Z世代の女性は24年と25年前半に支出の48%を女性作家に振り向け、全年代で最も高い比率となった。Z世代の男性は平均42%だった。ミレニアル世代の女性は、支出の47%を女性作家に充てた。
原題:With More Wealth, Comes More Women Shaking Up the Art Market(抜粋)
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