(ブルームバーグ):トランプ米政権は23日、元欧州委員(域内市場担当)のティエリ・ブルトン氏ら5人に対し、ビザ制裁を科した。5人が米国のテック企業に対し、プラットフォーム上で政治的言論を取り締まらせようとしたためだと主張した。
ルビオ米国務長官はX(旧ツイッター)への投稿で、「長きにわたり、欧州の思想的に偏った人々は、自分たちの考えに反する米国の見解を罰するよう、米国のプラットフォームに強制する組織的な取り組みを主導してきた」と述べ、「トランプ政権は、域外に及ぶ検閲という看過できない行為をもはや許容しない」と表明した。
ルビオ氏はさらに、他の者が方針を改めなければ、米当局者は制裁対象を拡大する用意があるとも述べた。
米国務省はブルトン氏のほか、デジタル上のヘイトスピーチや過激主義の阻止に取り組む活動家や非営利団体も制裁対象とした。他の4人はデジタルヘイト対策センターのイムラン・アーメド氏、英国に本拠を置くグローバル・ディスインフォメーション・インデックス(GDI)のクレア・メルフォード氏、ネット上のヘイトスピーチを監視する独ヘイトエイドに属するアンナ・レーナ・フォン・ホーデンベルク氏とジョセフィーヌ・バロン氏だった。
GDIは声明で、今回の制裁は「言論の自由に対する権威主義的な攻撃であり、政府による看過できない検閲行為だ」と指摘。トランプ政権が権力を用いて「意見の合わない声に対し威嚇し、検閲し、沈黙させようとしている」と非難した。
ブルトン氏はXへの投稿で、欧州の法律は幅広い支持を得て成立したと説明し、検閲しているのは欧州連合(EU)ではないと述べた。
EUとホワイトハウスは、言論の自由やテック規制を巡ってたびたび衝突してきた。イーロン・マスク氏が率いるXは今月、EUのデジタルサービス法(DSA)に違反したとして、1億2000万ユーロ(約221億円)の制裁金を科された。EU当局者は、この措置は検閲が目的ではなく、透明性に焦点を当てたものだと述べ、米国側の主張を否定した。
このところ、米政権の欧州に対する強硬姿勢が目立っている。ホワイトハウスは今月公表した新たな国家安全保障戦略文書で、欧州が何十年にも及ぶ経済衰退や政治的検閲、移民の影響で「文明喪失」の危機にさらされていると指摘していた。
原題:US Sanctions Former EU Official, Others in Swipe at Europe (2)(抜粋)
--取材協力:Gregory White.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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