トランプ米政権は数十人規模の米国大使に辞任を命じた。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。前例のない大規模な召還で、対象各国にある米大使館は上院の承認を受けたトップを欠くことになる。

関係者によれば、対象となった大使はキャリア外交官で、そのほぼ全員がバイデン前政権で任命されていた。大使らは過去数日間に電話で数週間以内の離任が必要だと通告されたという。

ルビオ米国務長官(11月5日)

解雇されるわけではないものの、多くがキャリアの後半に差し掛かり、上級外交官向けのポストは限られているため、新たな役割を見つけるのは容易ではない。

米国務省の高官の1人は、この召還は通常の手続きだとし、上級外交官には省内で新たな役割を模索するよう促していると説明。トランプ大統領には米大使が自身の政策課題を推進することを確保する権利があると述べた。

同高官は召還される外交官の正確な人数の言及を避けたが、省内で出回っているリストの一つには約30人が記載されている。

それでも今回の措置は、政権交代後もキャリア外交官を現職にとどめる傾向が続いてきた過去数十年にわたる歴代政権の前例を破るものだ。

大使は大きく二つのタイプに分かれる。一つは大口献金者や元政治家、大統領の友人などで、パリやロンドン、東京など注目度の高い大使館のトップに任命されるケースだ。支援への見返りとして起用されることが多く、こうした大使は指名した大統領が退任するのと同じ日にほぼ必ず辞任する。

しかし、米大使館の大半を率いているのは、国務省に所属し訓練を受けたキャリア外交官だ。これらの大使は時々のホワイトハウスの優先事項に応じてメッセージを調整する。上院の承認を受ける点は同じだが、政権が交代しても職にとどまるのが通例だ。

大使召還の対象国にはフィリピンやベトナム、グアテマラのほか、アフリカの10カ国余りが含まれている。

トランプ政権1期目で米国のパナマ大使を務め、その後大統領との意見の相違から辞任したキャリア外交官のジョン・フィーリー氏は、「最も経験豊富な米国の外交官を壊滅させる行為だ」と指摘した。

米外交官の労働組合で職能団体でもある米外交官協会(AFSA)は今回の召還について、リンクトインに掲載した発表文で、「危険なメッセージを送るものだ」とした上で、「米外交団の政治化」と呼んで反発を示した。

AFSAは会員から多数の召還報告を受けているとし、「正当な理由なく上級外交官を排除することは、国外における米国の信頼性を損ない、経験や米国憲法への宣誓よりも、政治的忠誠心が優先されることになるという、恐ろしいシグナルを職業外交官に送ることになる」とコメントした。

政権1期目にさかのぼると、トランプ氏の支持者の間では、外交団の一部が同氏の外交政策転換を妨害しようとするいわゆる「ディープステート(闇の政府)」に属しているとの批判があった。こうした主張は政権2期目で一段と勢いを増している。

原題:Trump Recalls Dozens of Career Ambassadors From Around the World(抜粋)

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