(ブルームバーグ):日本銀行は19日の金融政策決定会合で、政策金利を現在の0.5%程度から0.75%程度に引き上げることを決める見通しだ。米関税政策を巡る不確実性の後退と来年の賃上げに向けた前向きな動きを踏まえ、約1年ぶりの利上げに踏み切る。
政策金利は1995年以来の高水準となり、企業や家計、財政への影響など日本経済の金利耐性も試される局面に入る。
1.なぜ今利上げなのか?
今年1月の利上げ以降も経済・物価は日銀の見通しに沿った推移が続き、もっと早い段階での追加利上げが想定されていたが、今年4月の米関税政策の発動で頓挫した。その後、内外経済に目立った下押しは見られていないことから「青信号」がともった。
植田和男総裁が判断材料に挙げた、来春闘に向けた「初動のモメンタム(勢い)」も本支店のヒアリング調査で確認された。日銀が目標に掲げる2%を超える消費者物価の上昇が3年半以上も続く中、足元の円安が物価上昇につながるリスクも背中を押した。
2.日本経済への影響は?
日銀は0.75%程度の政策金利水準でも、引き続き金融環境は緩和的とみている。しかし、長引いたデフレ経済下で、超低金利環境に置かれた日本経済がどこまで金利のある世界に耐えられるのか、利上げしてみなければ分からないのが実情だ。
だからこそ日銀は、物価上昇が続く中でも慎重に利上げを進めてきた。住宅ローンを抱える家計や相対的に金利負担の大きい中小企業、金融機関の保有債券の含み損の拡大など金利上昇に伴う負の側面にも注意を払っていく考えだ。
3.高市政権は利上げを容認?
高市早苗首相は利上げに慎重とみられているが、現状では今会合での日銀の利上げに対し、主要閣僚を含めて政権内から表立って疑問視するような発言は聞かれない。一方で、物価高対応を中心とする大規模な経済対策を決めたばかりで、食料品やエネルギーの価格上昇につながる一段の円安進行への警戒感は強い。
今回の日銀の利上げにも一定の理解を示しているとみられる。もっとも、日銀が利上げしても円安進行が抑えられる保証はなく、円安対応で日銀が断続的に動くことも現実的ではない。その場合、政府が為替市場介入に動くかを市場は注視している。
4.利上げは今後も続く?
先に触れたように、日銀は0.75%の政策金利は引き続き緩和的とのスタンスだ。利上げ継続を示す「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」方針も変わらない見通しだ。
今後の利上げペースとどこまで政策金利が引き上げられるかに市場は注目しているが、当面は今回の利上げの影響を丹念に点検していく必要がある。円安回避の観点からも利上げ打ち止め感は出さないものの、利上げを急ぐ状況にもない。次のタイミングについては、経済・物価・金融情勢次第を強調するとみられる。
5.中立金利で踏み込んだ見解を示す?
経済を刺激も抑制もしない中立金利に関する情報発信に市場が注目している。日銀が想定している1ー2.5%と幅のある中立金利がより明確になれば、先行きの利上げ余地やペースがイメージできるためだ。しかし、レンジに大きな変化はないとみられる。
中立金利は景気や物価に影響を与えない「自然利子率」に「予想物価上昇率」を加えたもので、中央銀行が政策金利を決定する際の1つの目安となる。そもそも日銀は中立金利ありきの政策判断やコミュニケーションに慎重だ。植田総裁の説明も、中立金利に過度に焦点が当たらないよう、配慮した内容となる可能性が大きい。
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