米オープンAIの「ChatGPT」が全米の大学で足場を固めつつある。人工知能(AI)に慎重だった大学側の警戒感を乗り越え、次世代の労働力である学生に必要不可欠なツールとして浸透している。

ブルームバーグが確認した発注書によると、同社は約35の公立大学の学生・教員向けに70万件超のChatGPTライセンスを販売した。一方、これらの大学におけるマイクロソフトの生成AIサービス「Copilot(コパイロット)」の導入は一段と緩やかで、利用主体も学生より教員の比重が高い。同社は通常、Copilotを既存ソフトと抱き合わせで提供することが多い。

大学でChatGPTは急速に普及している。OpenAIと契約を結んだ20校の利用データによると、学生と教員は9月だけでChatGPTを1400万回以上使用した。1人当たりの平均利用回数は176回で、執筆、調査、データ分析における支援ツールとして使われている。

私立大学は情報公開法の対象外のため、AIライセンスの購入状況を把握しづらく、実際の大学契約数はさらに多い可能性が高い。OpenAIの広報担当者によると、世界全体では「100万件を大きく上回る」ライセンスを大学向けに販売している。マイクロソフトの広報担当者は、多くの大学が同社の多様なAI製品を利用していると述べた。

ハイテク業界はかねて、割安価格でソフトやハードを学生に提供し、生涯顧客として囲い込む戦略を取ってきた。アップルは教育割引を提供し、新学期シーズンには毎年キャンペーンを展開する。アルファベット傘下グーグルのラップトップ「Chromebook」と無料アプリ群も学生の取り込みに寄与した。

OpenAIは今、AI分野で同様の戦略を展開している。マイクロソフトのCopilotや評価が高まっているグーグルの「Gemini(ジェミニ)」も追随する可能性はあるが、現時点ではOpenAIがChatGPTの人気と大幅な値引きを武器に先頭に立っている。法人顧客や一般消費者の間で急速に浸透した状況とも重なる。

ブルームバーグが確認した契約書によれば、ChatGPTを一括購入する大学は、1ユーザー当たり月額数ドルで利用できる。これは、教育関係者向けの少人数利用でOpenAIが通常課す月額20ドルと比べても大幅に低い水準だ。法人顧客向けの料金は最大で月額60ドルに達する。

Photographer: 情報公開請求

OpenAIは教育分野に特化した営業担当者を採用し、大学との連携が多いオンライン学習プラットフォーム、コーセラから幹部を引き抜いた。現在OpenAIの教育担当バイスプレジデントを務めるリア・ベルスキー氏(元コーセラ幹部)は「大学生はとりわけ利用頻度が高い層だ」と話す。

また同社は2025年春学期の期末試験を前に、学生向けにChatGPTを無料化し、大規模な広告キャンペーンを展開した。また、カリフォルニア州立大学システムでの利用拡大を促すため、学生アンバサダーも採用した。

OpenAIが大学市場での優位性をどれだけ長く維持できるかは、グーグルとマイクロソフトがどれほど積極的に対抗するかにも左右されそうだ。だがOpenAIは、大学生の支持をすでに獲得しているとの自信を隠さない。同社のベルスキー氏は「Geminiやマイクロソフト、その他のAIツールにアクセスできる大学は多いが、最終的には当社のサービスを導入する」と述べ、「結局のところ、学生が最も好む技術はChatGPTだ」と語った。

原題:OpenAI Inks Deals With Colleges, Seizing Early Lead in Education(抜粋)

--取材協力:Shirin Ghaffary.

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