トランプ米大統領が石油大手寄りの政策を推し進める中、2025年はグリーン株にとって厳しい状況になるとみられていた。ところが実際は、人工知能(AI)にあらゆる種類のエネルギー需要が押し上げられ、同セクターは活況を呈している。

S&Pグローバル・クリーンエネルギー移行指数の年初来上昇率は44%と、S&P500種株価指数の16%を大きく上回る。一方、トランプ氏の「掘って掘って掘りまくれ」発言で恩恵を受けるとみられていたS&Pグローバル石油指数は11%にとどまっている。

こうした展開は多くの投資家にとって想定外だった。昨年11月の大統領選で返り咲きを果たしたトランプ氏がグリーン政策を放棄し、化石燃料の生産拡大に動くとの懸念から、25年に向けて太陽光・風力発電銘柄が売られていたためだ。

米国は確かにエネルギー政策の見直しを進めており、洋上風力プロジェクトの阻止や、温室効果ガス排出削減に向けた国際協定からの離脱といった措置を打ち出している。一方、ドイツや中国などは送電網整備やエネルギー転換に向けたインフラ構築に数十億ドル規模の資金を投じ、再生可能エネルギーセクターを下支えしている。

Photographer: Bing Guan/Bloomberg

需要を支えているのはAIデータセンターだけではない。金利低下で、多額の負債を抱えるグリーン企業の見通しは改善。バリュエーションは依然として平均を下回っており、多くの欧州・アジア諸国のほか、米国の一部州でクリーン電力への転換を後押ししている。

ブラックロックでテーマ型およびセクター投資のグローバル責任者を務めるイビー・ハンブロ氏によれば、数年にわたり停滞していた投資家の関心が再び高まりつつあるという。

AI競争の最前線に立つハイテク大手7社「マグニフィセント7」ばかりが注目され、「持続可能エネルギーはこれまで過小評価されてきた」と同氏は指摘。「この分野は今後大きな価値を生み出す可能性がある。顧客からの関心は劇的に高まっており、当社にとって26年の最優先分野の一つだ」と語った。

クリーンエネルギー株は今年、全ての地域でトップクラスのパフォーマンスとなっている。燃料電池メーカーの米ブルーム・エナジーは328%上昇し、世界有数のインバーターおよび蓄電システムメーカーである中国の陽光電源は137%上げた。欧州のシーメンス・エナジーは2倍超に値上がりした。

 

これらは、AI関連の代表銘柄である米エヌビディアの上昇率(約30%)をはるかに上回る。

ウィズダムツリーUKのマクロ調査責任者アニーカ・グプタ氏は「再生可能エネルギー銘柄が復活の時を迎えている」と話す。

見通しはさらに明るい。ブルームバーグNEF(BNEF)はAIの学習やサービスに伴う電力需要が10年以内に4倍に膨らむと予測しており、データセンターは世界で最も急速に電力消費が拡大する分野の一つになる見通しだ。

ブラックロックのファンダメンタル・エクイティーズで国際最高投資責任者(CIO)を務めるヘレン・ジュエル氏は、エネルギー需要が急増しているため、トランプ氏は再生可能エネルギーへの攻撃を断念せざるを得なくなるとみている。

同氏は「トランプ氏はさらなるエネルギーニーズを認識し、あらゆる形態のエネルギーを受け入れるやり方で対応すると考えている。26年に実行すると確信しており、すでに大きく上昇している銘柄にとって、一段の追い風となるだろう」との見方を示した。

原題:Green Stocks Are Big Winners as Tech Boom Drives Energy Demand(抜粋)

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