(ブルームバーグ):2025年に記録的な好成績を収めている新興国絡みのキャリートレードが来年も勢いを保つとの見方が大口投資家の間で広がっている。
外国為替市場のボラティリティー(変動性)低下や米ドル安が進んだことが、低金利通貨で資金を調達し高金利通貨を買うキャリートレードに好環境をもたらした。ブルームバーグの指数によると、この戦略の今年のリターンは約17%に達し、2009年以来の高水準となっている。
バンガード・グループ、インベスコ、ゴールドマン・サックス・グループ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)などの大手資産運用会社や銀行は、先進国と新興国の金利差が来年も続くと予想。米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめ先進国・地域の主要中央銀行が借り入れコストを低水準に維持するとみられる中、ドルには引き続き下押し圧力がかかると見込まれる。ドルは今年7%余り下落している。
ニューバーガー・バーマンの新興国債券共同責任者ゴーキー・ウルキエタ氏は「キャリートレードには依然として妙味がある。特にブラジル、コロンビア、一部のアフリカ諸国など高金利国で魅力的だ」と指摘。ただ今年の上昇を経て「投資機会はより選別的になっている」とも述べた。

高利回りが支え
今年は新興国の株式、債券、通貨がそろって堅調に推移し、投資家は魅力的なキャリートレードの選択肢を得た。政策金利の高止まりが続くブラジルやコロンビアなどでは、通貨が対ドルで13%超上昇している。
こうした好調が続くかどうかを左右する重要な要素は、米経済の行方だ。理想的シナリオは、米経済の成長が鈍化しFRBが金融緩和を継続することで、ドルの魅力が薄れる展開だ。ただ、リセッション(景気後退)に陥ればリスク回避姿勢が強まり、逆に予想以上の好景気となれば利上げ観測が浮上する。
「ドル安が進む局面では、キャリートレードは引き続き収益源となる」とインベスコの新興国債券共同責任者ウィム・バンデンフーク氏は語る。
同氏はブラジル・レアル、トルコ・リラ、南アフリカ共和国のランドなどに強気姿勢を示している。ゴールドマン・サックスの米州為替オプション取引責任者ブライアン・ダン氏は、レアル、ランド、メキシコ・ペソに対してドルを売る取引の妙味を指摘。これらを均等比率で組んだバスケットの年初来リターンは約20%に達しているという。
インベスコはドルに対するランド買いに加え、ユーロに対するハンガリー・フォリント買いも実施しており、25年のリターンはこれまでのところキャリーを含めて約11%。一方、BofAはコロンビア・ペソに対するレアル買いを推奨しており、金利差を狙ったこの取引で2%以上のリターンを上げている。
ボラティリティーに警戒も
キャリートレードでは、為替相場の急変動が数カ月分の利益を一瞬で吹き飛ばす可能性があるため、投資家はボラティリティーが比較的抑制された状態が続くかどうかにも注目している。
BofAの為替ストラテジスト、アダルシュ・シンハ氏率いるチームは、今後数カ月で通貨変動を高める要因になり得る出来事として、米中間選挙や中銀政策のばらつきなどを挙げた。
一方、資産運用会社で世界2位のバンガードは、25年4月にトランプ米大統領が発表した関税政策をきっかけとする市場の混乱はすでに収束しており、26年も安定した環境が続くとみている。
バンガードの金利部門グローバル責任者ロジャー・ハラム氏は「政策の不安定さや景気後退リスクに起因する大きなボラティリティーは想定していない」と述べ、「こうした環境では、新興国通貨はおおむね堅調に推移する傾向がある」と語った。
原題:Carry Trade Revival That Electrified EM Spurs Optimism for 2026(抜粋)
--取材協力:Carolina Wilson.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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