アサヒグループホールディングスの勝木敦志社長は、サイバーセキュリティーを担う専属部署の新設も選択肢になるだろうとの認識を示した。9月に起きたサイバー攻撃に伴うシステム障害が国内事業に混乱を引き起こしたことを受け、再発防止や危機時のスムーズな事業継続を担保する体制作りを模索する。

勝木氏は12日のインタビューで、組織改編について決まったものはないとした上で、ITやテクノロジーを推進する部門とは別に、サイバーセキュリティーを監視・改善する「専属のチームがおそらく要るだろう」と述べた。社内人材に限らず、外部人材やITベンダーの力を活用する考えも示した。

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同社はサイバー攻撃を受けて、約2カ月にわたり受注・出荷業務を手作業で対応。10-11月の酒類の売上高は概算で前年同月比で1割超減った。サーバーへの侵入を検知する仕組みを導入していたものの防げなかったほか、回復に時間を要するなどシステムのぜい弱性が浮き彫りになっていた。

勝木氏は、テクノロジーを推進する部署ではコストの制約などもあり「サイバーセキュリティーの優先順位が劣後する可能性がある」と指摘。最優先課題という意識を経営者が持つ必要があるとの考えも示した。

現在は、IT部門の中にサイバーセキュリティを担うチームが設置されている。IT担当役員の崎田薫最高財務責任者の管轄業務にサイバーセキュリティも含まれる。

一方でサイバー攻撃の業績への影響については限定的との見方も示した。日本事業がグループ全体に占める割合から単純計算で算出した場合、失った売上高は2.5%程度とし、「屋台骨が揺らぐような数字にはならない」と話した。また主力のスーパードライについては、すでに影響はなくなっているという。ふたを開ければすぐに飲めるお酒(RTD)や洋酒などでは出荷できていない商品があり、今後の課題だ。

アサヒGHDは12月から、グループ各社で従来のシステムを通じた受注を順次再開。勝木氏は来年2月以降を「復興」期間として位置付けており、今秋以降に失ったシェアの回復に本格的に取り組む考えを示した。

2026年10月にはビールの税率が下がる酒税改正を控えており、ビール市場でのポジション強化を目指す。主力のスーパードライでは拾いきれない消費者に向けて、新商品や新たな価値訴求を進める方針だ。例えばふたを開けると自然に泡立つ生ジョッキ缶のような、工夫したパッケージを活用するアイデアもあると話した。

足元の株価は、サイバー攻撃の被害公表前の水準には戻る場面もあったが、年初来の上昇率は6.3%と東証株価指数(23%)を下回る。勝木氏は、株価向上には成長戦略の解像度を上げる必要があると認識する一方、業績開示ができない中で将来の計画について説明するのは難しいとする。

低アルコール飲料やノンアルコールビールテイスト飲料、RTDといったビール隣接カテゴリーなどを伸ばしていく、具体的な手法や定量的な目標を含めた具体的な成長戦略については、次の決算開示のタイミングで示したいと話した。

(3段落目の酒類の減収率を訂正します)

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