米清涼飲料大手コカ・コーラの広告は長い間、自社の主力商品が「本物」であることを強調してきた。そして今、同社は新しいトップが「本物の米国人」だと伝えようとしている。

Photographer: Hollie Adams/Bloomberg

同社は10日、ジェームズ・クインシー最高経営責任者(CEO)の後任として、最高執行責任者(COO)のエンリケ・ブラウン氏が2026年3月末に就任すると発表した。併せてブラウン氏が「カリフォルニア州で生まれ、ブラジルで育った米国籍」だと明記した。

国籍に関する記述は、米国企業としては異例だ。トランプ大統領が今年、コカ・コーラやブラジルに言及した経緯もあり、地政学的な配慮に基づく対応との臆測を呼んでいる。クインシー氏が2016年にCEOに指名された際、英国出身であることには触れられていなかった。

企業統治の専門家チャールズ・エルソン氏は「現政権下では移民を巡る論争がある。あらゆる可能性に備えておきたいのだろう」と語る。「『メイド・イン・アメリカ』の機運が強まる今、CEOが米国生まれだと明確にする必要がある」という。

コカ・コーラは、なぜブラウン氏の国籍に触れたのかコメントを控えている。

トランプ政権の「米国第一主義」を受け、コカ・コーラがブラウン氏の国籍を「コーラのガラス瓶のごとく」明確にするのが安全だと判断した可能性がある。同社は世界200以上の国・地域で1日当たり約20億本分の飲料を提供しているが、北米市場での販売数量は昨年、全体の5分の1未満だった。

歴代のCEOにはアイルランドやオーストラリアの出身者も含まれる。消費財業界のアナリストを経て現在は企業顧問を務めるジョナサン・フィーニー氏は、2000年にCEOに就任したオーストラリア国籍のダグ・ダフト氏について、コカ・コーラが米国的ルーツを超えて世界を見据えようとする姿勢の象徴だったと指摘。外国籍のCEOが続いてきたからこそ、ブラウン氏が米国出身という事実は「特筆に値する」とし、「企業側が言及しなければ気付かれないような興味深い点だ」と述べた。

ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスでコーポレートコミュニケーションを専門とするポール・アルジェンティ氏は、コカ・コーラの意図が何であれ、「クレイジーな時代に生きる」企業にはこうした対応が必要だとの認識を示した。

原題:With Trump Watching, Coke Makes Clear Its New CEO Is American(抜粋)

--取材協力:Rachel Gamarski、Kristina Peterson.

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