トランプ米政権の大型減税・歳出法に伴う受給資格の変更により、公的医療保険を失うニューヨーク市民は100万人近くに上る見通しだ。財政難が続く同市の公営病院システムにさらなる負担をもたらす恐れがある。

ニューヨーク州のトマス・ディナポリ会計監査官は10日公表の報告書で、トランプ政権の「一つの大きく美しい法案」の成立により、ニューヨーク市では約80万人がメディケイド(低所得者向け医療保険制度)の適用対象から外れるとの見通しを示した。さらに、約15万人がニューヨーク州の低所得者向け医療保険「エッセンシャルプラン」の対象外となる見込みだという。

ディナポリ氏は同報告書で、無保険者の増加は、ニューヨーク市が運営する11の公営病院から成る医療システム「ヘルス・アンド・ホスピタルズ(H+H)」に深刻な影響を及ぼすと指摘した。

同氏は、連邦政府によるメディケイドの予算削減や受給資格変更について、「無保険者の増加により、さらに多くの患者がこれら機関の医療施設を利用する可能性が高まる中で、財政状況に悪影響を及ぼすだろう」と指摘。無保険率の上昇は「患者の支払い能力にかかわらず医療を提供するというH+Hの基本方針を踏まえると、財政的な重荷になる」とした。

米国最大の公営病院システムであるH+Hは、すでに多数のメディケイド受給者や無保険の患者を受け入れており、その中には法的許可証を持たずに滞在している移民も含まれる。昨年は、H+Hの病院を退院した患者のうち84%がメディケアまたはメディケイドの加入者で、同システムの収入の72%がメディケイドまたはエッセンシャルプランによるものだった。

H+Hは長年にわたり、財政の安定化に苦戦してきた。2016年以降は節減計画の下で運営されており、市が連邦政府から追加のメディケイド補助金を確保できるかどうかに大きく依存している。ディナポリ氏は、これらの補助金は州・連邦政府の承認を必要とするため変動が大きく、「一貫性に欠け、しばしば支給が遅れる」と指摘した。

ディナポリ氏は、「H+Hはサービスの統廃合といった困難な選択につながり得るコスト削減計画を再検討する必要に迫られる可能性が高い」と述べた。

原題:NY Warns 950,000 People to Lose Health Coverage Under Trump Cuts(抜粋)

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