米金融当局が公表する金利予測分布図(ドット・プロット)、金融市場で最も注視されている散布図であることはほぼ間違いない。金融当局は2012年1月以降、3カ月ごとにドット・プロットを更新している。

たとえ当局自体がそう望んでいないとしても、ドット・プロットは事実上、米国の中央銀行である連邦準備制度よる金利予測として受け止められてきた。当局者の間に意見の相違があるかどうかの手掛かりとしても重要である一方、その解釈は容易でない。

ドット・プロットで示されているのは何か?

ドット・プロットとは、米金融当局がコントロールする短期政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利が、今後数年でどの水準に達するかの見通しを示すチャートだ。金利を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)の各参加者は、それぞれが適切と考える金利のレンジの中央値を今後3年間の年末時点および長期的な見通しとして一つずつドットで示す。市場関係者はその中でも全体的な中央値のドットに特に注目している。

このドット・プロットには、首都ワシントンに拠点を置く7人のFRB理事(正副議長を含む)と12の地区連銀の総裁を合わせた最大19人の金融当局者の見通しが示される。

FF金利の予測は何の役に立つのか?

ドット・プロット考案の起源は11年で、米金融当局者は当時、金融危機後に講じてきた前例のない規模の経済支援策からの転換に向け、いかに市場に備えさせるかを模索していた。

当時のバーナンキFRB議長とイエレン副議長はドット・プロットについて、FOMCの直近の政策決定を超える形で当局の見解を市場に示す手段と見なしていた。

なお、FOMCの声明は主に現在の経済情勢と直近の金利目標に重点を置いているが、年月とともに進化を遂げ、金利の今後の道筋について強いメッセージを発する手段に利用される場合もある。

ドット・プロットはなぜ重要か?

ドット・プロットに変化があれば、米金融当局が将来的に利上げを見込んでいるのか、利下げを見込んでいるのかについて、投資家に強力なメッセージを送ることになる。また、このチャートは当局者の見通しと金融市場の予想との間にあるギャップを浮き彫りにするベンチマークとしても機能する。

どのドットがどの当局者のものか分かるのか?

それは分からない。各ドット・プロットが誰のものかは明記されておらず、どの予測がFRB議長によるものかを特定することはできない。もっとも、アナリストはそれぞれ推測している。この匿名性こそが、ドット・プロットを巡って熱心な支持者だけでなく、批判者も存在する理由の一つだ。

ドット・プロットについて他にどのような批判があるか?

恐らく最大の批判の的はドット・プロットがFOMCとしての公式なコンセンサス予測ではないという点だ。FRBのスタッフは一時、コンセンサス・ドットを作成する案を検討したものの、多様な見解を持つ多数の当局者の間で合意を形成するのは困難過ぎるとして、この案は見送られた。

各当局者はそれぞれ異なる経済モデルや前提条件に基づいて予測を立てている可能性があり、そのためドットの作成は一貫性を欠き、その背後にある思考過程も把握しづらい。

さらに問題を複雑にしているのが、地区連銀総裁12人のうち、FOMCでその年に実際に投票権を持つのは5人(このうちニューヨーク連銀総裁は常任メンバー)だけという点だ。この結果、ドット・プロットがFOMCの長期的な意思をどれだけ正確に反映しているのかという疑問が生じている。

歴代FRB議長はドット・プロットをどう評価しているか?

評価は複雑だ。イエレン氏は14年3月、バーナンキ氏の後任の議長として初めて臨んだFOMC会合後の記者会見で、政策について当局が広く国民に語る主要な手段として、「ドット・プロットに注目すべきではない」と述べ、過度な重視を避けるよう呼びかけた。

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しかし、16年3月に同年の利上げ見通しがドット・プロット中央値で4回から2回に引き下げられた際には、「主に世界的な成長見通しの小幅な鈍化」と信用環境の引き締まりを反映していると、イエレン氏は記者会見で説明した。

その後、18年2月にイエレン氏の後任として議長に就任したパウエル氏も、ドット・プロットの重要性を否定する姿勢をしばしば示してきた。24年3月には議会で、最新のドット・プロットは「計画ではない」と語った。

だが、ドット・プロットが有効に機能した場面もある。金融当局が23年6月、利上げを見送った際には、ドット・プロットが年内にさらなる利上げがあることを示唆していたことで、利上げサイクルは終わったとする投資家の過剰な楽観を抑えるのに一役買った経緯がある。

原題:The Dot Plot, Explained: How the Fed Forecasts Rates(抜粋)

--取材協力:Alister Bull.

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