(ブルームバーグ):国内企業による個人向け社債の年間発行額が過去最高を更新した。金利正常化を背景に個人投資家の社債への関心が高まる中、企業が金利上昇を見越して資金調達を前倒しし、市場拡大を後押ししている。
ブルームバーグの集計によると、2025年に日本企業が起債した個人向け社債は10日時点で約2兆7600億円と、過去最高だった前年を上回った。三菱UFJフィナンシャル・グループ、ソフトバンクグループ、楽天グループといった知名度の高い定例発行体のほか、31年ぶりに発行を再開した京王電鉄や新規参入のイオンなど、発行体層が拡大。案件数も62件と前年から3割増加した。
債券市場では日本銀行の利上げ観測を背景に、社債の値決めの基準となる国債利回りが上昇基調をたどっている。10年国債利回りはすでに08年以来の高水準に達し、2%の節目に接近。こうした金利上昇で投資妙味が増した社債に、家計が保有する1000兆円超の現預金の一部が向かい始めている。
みずほ証券商品業務部の坂本大輔次長は、物価高で家計負担が増し、個人は預金だけでは対応しきれず「運用の必要性を強く意識し始めている」と指摘する。「数年前のデフレ時代には想定しなかったインフレと、債券金利の上昇が重なった」ことが、社債への関心を高めていると言う。
関係者によると、日銀は内外の経済・物価や市場に大きな変化がない限り、18、19日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に引き上げる公算が大きく、その後も利上げ継続姿勢を維持する見通しだ。
金利の先高観が強まる中、社債の前倒し発行に動く企業がさらに増える可能性もある。野村証券の荻野和馬シニア・クレジット・アナリストは「金利がさらに上がる前に早めに資金を手当てしたいという傾向と、将来的な利益成長のための資金ニーズの高まりは来年も続くだろう」との見方を示した。
--取材協力:Finbarr Flynn.
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