脱炭素につながる新素材を開発するTBM(千代田区)が東証グロース市場での新規株式上場(IPO)に向けた準備に入った。早ければ2027年の上場も視野に入る。中島正剛最高財務責任者(CFO)は、現在の企業価値の約1300億円を上回る時価総額での上場を目指しているとし、国内スタートアップとしては大型上場となる可能性がある。

中島CFOは今月のインタビューで、これまで優先させてきた単年度営業損益の黒字化について早晩実現できるめどが立ったことから上場についても「そう遠くないタイミングで実現できる」見通しと話した。時期については来年はないとする一方、27年については「選択肢から外れているわけではない」と述べた。既に主幹事証券会社や監査法人を選定し、個別に投資家の関心を探っている段階という。

今後は収益が拡大するフェーズに入り、上場時の時価総額が「今の企業価値を下回ることは考えていない」とし、その後の株価上昇にも自信を持っているとした。上場で得た資金を海外展開の加速に向けた投資などに振り向ける考え。

実現すれば、国内スタートアップの上場としては大型案件となる。新興企業で公開時の時価総額が1000億円を超えた直近の事例としては、昨年6月に上場した仕事仲介アプリ運営、タイミーがある。公開価格ベースの時価総額は約1380億円だった。グロース市場改革で上場へのハードルが上がる中、足元では上場を先延ばしし、未上場での規模拡大を優先する企業も少なくない。

TBMは11年に創業。現在は、発電所などから排出されるCO2を回収し、カルシウム含有廃棄物や廃プラスチックの再生材を混合してつくる「CR-LIMEX」などの新素材を手掛けている。CO2を製品に閉じ込めることで環境への負荷が抑えられるため、建材など長期にわたって使用される製品向けの需要も見込まれている。「環境と経済性を両立」させる観点から、家庭から排出される容器包装プラスチックからつくる再生素材も販売する。

同社製の素材は環境への貢献が求められる大手企業での導入が進んでいる。吉野家やデニーズ、リンガーハットなど外食企業のメニュー表のほか、アパホテルの客室用ゴミ袋などで導入されてきた。

世界的な脱炭素の流れの中で、カーボンリサイクルなど環境関連ビジネスの市場は急激な成長が見込まれ、日本政府もグリーントランスフォーメーション(GX)分野への支援を強化している。調査会社富士経済は50年のCO2削減関連の市場規模を約198兆円と23年比で約17倍に拡大するとみている。

TBMでは自社の製品を武器に、CO2などを多く削減した企業がクレジットを獲得し、それを削減できない企業に売却する「カーボンクレジット」市場に参入する計画も進めているという。ただ、今年1月に発足した米国の2期トランプ政権では環境規制を緩和する方向も示されており、市場の成長が想定通りとなるかは不透明な面もでている。

過去にゴールドマン・サックス・グループや韓国財閥のSKグループ、伊藤忠商事なども出資しており、TBMの直近の企業価値は約1360億円となっているという。

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2025 Bloomberg L.P.