(ブルームバーグ):米銀行大手JPモルガン・チェースのコンシューマー・コミュニティー・バンキング事業を統括するマリアンヌ・レーク氏は、来年の同行支出額がアナリスト見通しを上回る1050億ドル(約16兆4800億円)になるとの予想を示した。これを受けた9日の米市場でJPモルガン株は下落した。
同氏はゴールドマン・サックス・グループが主催した会合で、コスト増大が予想される最大の要因は「取引規模と成長に伴う経費」だと説明した。戦略的な投資と「インフレによる構造的影響」も挙げた。
JPモルガン株は4.7%安の300.51ドルでこの日の取引を終えた。8カ月ぶりの大幅安となり、KBW銀行株指数の構成銘柄としては最も大きく下げた。
ブルームバーグがまとめたアナリスト調査では、JPモルガンの26年支出額予想は平均で1011億ドル。レーク氏が述べた数字は最も高いアナリスト予想をも上回り、アナリストが予想する25年の経費より約9%高い額となった。同行の非金利費用は今年1-9月期に前年同期比で4%増加している。
レーク氏は自身が率いるコンシューマー・コミュニティー・バンキング事業が費用増加の「大きな要因」になっていると話した。アドバイザーへのインセンティブ報酬と、商品マーケティング、支店網の拡大、人工知能(AI)への投資をコスト増加の要因に挙げた。
2022年の記憶
今回投資家に広がった衝撃は、同様に経費見通しが株価下落を招いた2022年を想起させる。ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)らJPモルガン幹部らは当時、批判に対応して投資家説明会を開催することで支出計画の透明性を高め、最終的に株主の不安を和らげた。
ウェルズ・ファーゴのアナリスト、マイク・マヨ氏は9日付のリポートで、JPモルガンのコスト増大には競争面での優位性を高める効果があるとの見方を示した。一方で、銀行業界にとっては「マイナス」だと指摘。「この影響が今後広がれば、他行もシェア拡大に向けて支出を増やす必要性が生じるかもしれない」と説明した。
レーク氏によると、投資銀行部門の2025年10-12月(第4四半期)手数料収入は前年同期比で1%の伸びにとどまる可能性がある。アナリスト予想は6.3%の急増となっていた。一方でトレーディング収入はアナリスト予想を上回り、%表示「一桁台前半」のペースで伸びる可能性があるとレーク氏は述べた。同行では今年1-9月の投資銀行手数料収入が11%、トレーディング収入が20%急増した。
昨年11月の選挙でトランプ氏が当選した直後の「アニマルスピリット」は、関税政策の発表とともに後退したが、10月に入ると企業取引に対する意欲が復活しその勢いは続いている。
これに先立ち、ゴールドマンのデニス・コールマン最高財務責任者(CFO)は同じ会合で、企業の合併・買収(M&A)の発表ベースで今年は過去2番目に大きな年になると予想。プライベート・エクイティー(PE、未公開株)取引に雪解けが起きているとの見方を示した。
米経済全般についてレーク氏は、消費者と小規模企業は健全のようだが、環境は「やや悪化している」と指摘。「段階的なストレスを乗り切るための余力が落ちている」として、「インフレ率は低下したものの、現金バッファーの備えは常態化し、物価水準は決定的に高い」と述べた。
原題:JPMorgan Drops as Bank Warns of Higher-Than-Expected Costs (3)(抜粋)
(株価を終値に更新し、マイク・マヨ氏のコメントを加えます)
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