去年、韓国で起きた「非常戒厳」から、きょうで1年です。当時、戒厳軍の銃口に立ち向かった女性が取材に応じ、この1年の韓国社会の変化を語りました。

記者
「韓国で非常戒厳は出された日から、きょうで1年です。まもなく、李在明大統領が記者会見を行います」

韓国 李在明 大統領
「大韓民国の、この美しく平和な市民革命と民主主義の回復が全世界の歴史的模範になることを願います」

きょう、特別声明を発表した韓国の李在明大統領。非常戒厳の宣言から1年。国民の力で民主主義を回復したと強調し、12月3日を「国民主権の日」と定める意向を示しました。

去年12月3日の夜、非常戒厳は当時の尹錫悦大統領の突然の談話発表で始まりました。国会周辺では上空でヘリが飛び、軍の装甲車が走りました。銃などで武装した大勢の兵士が立法府の象徴である国会に突入します。

それに対し…

記者
「国会議事堂の前には、戒厳令に反対する大勢の市民たちが集まっています」

自由と民主主義の危機だと韓国国民は大きく反発したのです。兵士の銃口を素手でつかみ、その行く手を阻んだ一人の女性。

「恥ずかしくないのか」

当時、野党「共に民主党」の職員だったアン・グィリョンさんです。この映像は市民の抵抗の象徴として、世界中に大きな衝撃を与えました。

あれから1年。アンさんには、今の韓国はどう映っているのでしょうか?

アン・グィリョンさん
「(Q.当時、怖い気持ちはなかったんですか?)私も人間なので怖かったです。きょうが最後かもしれないと思いましたが、(国と国民のために)逃げるつもりはなかったです」

アンさんはこの1年を振り返り、国民の強い意志が民主主義を守ったと話します。

アン・グィリョンさん
「民主主義というのは、たった一人の暴走で簡単に崩れることになります。国民が力を合わせて民主主義を回復しました。そういう歴史を残したんだなと思います」

その一方で、非常戒厳をめぐり、与党派と野党派ではデモや集会が過激化。韓国社会の分断が深まってしまったと指摘されています。

アン・グィリョンさん
「(社会の両極化が)より深くなったという側面は懸念しています。手遅れるになる前に、政治が考えなければいけない問題だと思います」

その後、非常戒厳を宣言した尹前大統領は罷免され失職。アンさんは今、大統領府の副報道官として、政府と国民をつなぐ役割を担っています。

アン・グィリョンさん
「政治は私たちみんなのものです。私たちの政治を、私たちの民主主義を絶えず関心を持って守っていくために努力しなければならない、そんな気がしています」

韓国社会はこれから、成熟した民主主義を根付かせていけるのでしょうか。