(ブルームバーグ):日本でアクティビスト(物言う株主)の活動は以前からあったが、政府と東京証券取引所がコーポレートガバナンス(企業統治)と株主還元の改善を促し、ここ数年そうした動きが勢いを増している。その流れは日本を代表する企業にも及び、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資家をも巻き込んでいる。
ブルームバーグがまとめたデータによると、日本で昨年始まったアクティビストのキャンペーン数は過去最多を記録した。2025年もこのままのペースが続けば、記録更新となる見通しだ。
エリオット・インベストメント・マネジメントがトヨタ自動車グループによる豊田自動織機の非公開化(買収額4兆7000億円)案に反対する陣営に加わったと報じられた。
エリオットは、この買収提案が6月時点の豊田自動織機の株価に対して11%のディスカウントで提示されたものであり、提示額は低過ぎると主張している。他の投資家からもトヨタの計画に対する批判が出ていたが、エリオットの参戦により、反対の勢いはいっそう増している。
他の例としては、日本で最も影響力のあるアクティビストの1社とされるエフィッシモが、日産自動車の株式を取得したケースが挙げられる。これは日産が業績不振と人員削減を発表した直後の約1年前のことだった。
また、日本でも知名度の高いアクティビストであるオアシスは、カシオ計算機の少数株式を保有していることを7月に明らかにした。
さらに、国内アクティビストの草分け的存在である村上世彰氏も複数の企業に対して新たなアクティビスト活動を展開している。
アジアなどで取引を手がける主要なディールメーカーは、今後さらに多くのアクティビストが特定の案件に異議を唱え、より高いプレミアムを求めたり、伝統的なコングロマリットや業績が低迷している企業に構造改革を迫ったりする動きが強まると見込んでいる。取引件数がさらに増えそうだ。
日本ではすでに企業の合併・買収(M&A)件数が過去最高水準に達しているが、もしカナダのコンビニエンスストア運営会社クシュタールが今年夏、「セブン-イレブン」を展開するセブン&アイ・ホールディングスに対する買収案(7兆円規模)を撤回していなければ、さらに取引額が膨らんでいたことになる。
セブン&アイは、アルチザン・パートナーズなど一部株主からクシュタールとの協議を求める圧力を強められていた。クシュタールは、セブン&アイが実質的な協議を拒否したとして撤退した。
助言会社の間でも、こうしたアクティビズムの動きを歓迎する声が出ている。アジア太平洋地域の多くの新興国市場では取引規模が小さく、顧客が支払う手数料も低いかゼロの場合が多い。
それに対し、日本は成熟市場であり、より大規模な取引が行われやすく、トップクラスのディールメーカーが高額の報酬を得やすい環境にある。
原題:Activist Jostling in Japan Nears New High: Bloomberg Deals(抜粋)
--取材協力:Michael Hytha.
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