(ブルームバーグ):米アップルは人工知能(AI)投資を積極化しない姿勢をウォール街から多く批判されてきた。しかしここにきて、その慎重な戦略が同社に突然の追い風となっている。
投資家はOpenAIやメタ・プラットフォームズ、マイクロソフトなどによる巨額のAI投資に厳しい目を向け始めている。今年最大のモメンタム銘柄の一角だったこれらの銘柄は波乱の展開となっており、結果的にアップルの立場が再評価されつつある。
アップルはAI分野で依然「勝ち組」になる可能性があると考えられている一方で、多額の設備投資のリスクを負っておらず、手元資金も潤沢だ。AI関連銘柄の調整がさらに進む場合、アップル株はテクノロジー業界の中で「安全資産」となり得る。
11日の米株式市場序盤ではこの傾向が目立ち、アップル株が0.8%上昇し、S&P500種株価指数の上昇に対する寄与度が構成銘柄で最高だった。一方、エヌビディアとメタ、マイクロソフトなどAI関連株は相場全体を押し下げた。
ザックス・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ブライアン・マルベリー氏は「アップルはテクノロジー企業でありながら、AI企業ではないという点がヘッジになる」と指摘。「アップルには、他社が問われている『投資資本に対するリターンをどう説明するか』という難題に答える必要がないという強みがある」と述べた。
アップルの基本戦略はシンプルだ。他社のAIモデルを活用して多くの顧客にAI機能を提供し、独自開発に必要な多額の投資を避けることができる。この点が、他の巨大テック企業とは一線を画している。
エバコア・ウェルス・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ブライアン・ポラック氏は「アップルはマグニフィセント・セブンの中で、投資額やレバレッジの観点からAIへのエクスポージャーが最も少ない」と分析。「アップルが競合他社ほどの資本を投じずにAIの恩恵を受けられる可能性はあるのは、紛れもない事実だ」と付け加えた。
アップルの今会計年度における設備投資は約140億ドル(約2兆1600億円)の見通し。一方、マイクロソフトの設備投資は同社の26年6月通期で940億ドルを超える見込み。株式時価総額がアップルの半分程度のメタは、25年に700億ドル超の設備投資を予定している。
原題:Apple’s Restraint Finds Fans as AI Spending Faces Scrutiny(抜粋)
--取材協力:Min-Jeong Lee、Subrat Patnaik、David Watkins.
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