(ブルームバーグ):投資家にとって従来からインフレヘッジ手段となっている金だが、中国では金価格の高騰が局所的に価格を押し上げ、デフレ圧力を一時的に和らげている。
10月の消費者物価指数(CPI)は変動の大きい食品やエネルギーを除いたコアで前年同月比1.2%上昇と、ほぼ2年ぶりの高い伸びを記録。総合CPIも予想外に4カ月ぶりのプラスとなった。ゴールドマン・サックス・グループと申万宏源集団の推計によると、コアCPIの上昇分のうち、約半分以上が金相場によるものだった。
キャピタル・エコノミクスの中国担当エコノミスト、ズーチュン・フアン氏は10日のリポートで、CPIに関して「上昇は一時的な要因、特に金の値上がりを主に反映したもので、中国のデフレ問題が解消に向かっていることを意味するわけではない」と指摘。「需給の不均衡は続き、来年もデフレ圧力は残るだろう」と分析した。
根強いデフレ圧力は、米国との第2次貿易戦争を通じて底堅さを示した中国経済をむしばんでいる。需要の弱さを映す物価下落は、企業収益の落ち込みや賃金の低下を招いている。
実際の状況は公式データが示唆するよりもさらに悪い可能性がある。ブルームバーグ・ニュースが複数の情報源を基に日用品やサービス約70項目を分析したところ、CPIの数字が示すよりも価格の下落幅は大きかった。
局所的な価格上昇
金価格は年間ベースで1979年以来の大幅上昇となる方向にあり、中国で局所的な値上がりが起きている。中国は世界最大級の金市場で、金製品は贈答や資産保全の手段として人気が高い。
ブルームバーグ調査では、10月のCPI上昇率0.2%を正確に予測したエコノミストはわずか2人だった。
多くのエコノミストは今回の物価上振れを一時的な現象とみている。内需がなお弱く、小売売上高の伸び率は鈍化し、投資も減少している。こうした需要低迷が価格競争や過剰生産を抑制しようとする政府の取り組みを妨げており、国内総生産(GDP)デフレーターは10四半期連続でマイナスとなっている。
エコノミストの間では、より大胆な財政・金融緩和を求める声が強いが、中国当局は過去の景気下降時に講じたような大規模支援を見送っている。債務膨張を巡る懸念が背景にある。
ピンポイント・アセット・マネジメントの張智威チーフエコノミストは「デフレが終わったと結論付けるのは時期尚早だ。不動産価格はなお下落傾向にあり、国内需要も弱い。一方で、輸出の勢いも失われつつあるように見受けられる」と述べた。
原題:Booming Gold Prices Are Hiding China’s Deflationary Pain for Now(抜粋)
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